真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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セミドキュメント 特訓名器づくり/DMM戦
な行
/
2015年05月20日
「
セミドキュメント 特訓名器づくり
」(昭和56/製作:ワタナベ・プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:中村幻児/脚本:吉本昌弘・伊藤智司/製作:渡辺忠/企画:才賀忍/撮影:倉本和人/照明:出雲静二/編集:竹村編集室/音楽:PINK BOX/助監督:岡隆通/演出助手:広木隆一・山岡博美/撮影助手:水野真/照明助手:堺一郎/効果:西武千/録音:銀座サウンド/現像:東洋現像所/出演:和田家の人びと 父 野上正義・母 杉佳代子・長男 広田性一・長女 蘭童セル 高校時代の男先生 大杉漣・高校時代の女先生 香川留美・娘の同級生 五月マリア・その恋人 村井浩・父の恋人 水月円・警官 飯島洋一・予備校生 釜田千秋・高橋健一・志村幸雄)。
郊外の朝、ベランダに出た浪人生の長男・和田総一郎(広田性一/凄い名前だ)を呷りで抜き、逆に庭で体操する父・賢一郎(野上)を、ベランダ視点の俯瞰で捉へる。台所、兼居間では長女・泉(蘭童)と二人で義父の墓参りに行く心積もりの母・帯子(杉)が、気忙しく朝食の支度。男衆は行かないのかといふと、賢一郎は嘘スメルが爆裂する新入社員の歓迎式で、総一郎は予備校の試験。朝は米食を希望する賢一郎が、ボヤいてタイトル・イン。試験が始まるや総一郎は眠たくなる、途中でバッくれた筈の泉が墓参り、してゐるのかと思ふとあらうことか帯子を墓石に縛りつける。そこに現れた総一郎が花で半裸の母親を打つのは、派手な夢オチ。他方問題を見るなり絶望し、隣の総一郎が回収した答案用紙には大きく“死”の文字を書き殴つてゐた加藤(釜田千秋か高橋健一か志村幸雄)に連れられ、総一郎はビニ本屋に。そこで気付いた総一郎に対し、息子には気付かず買物を済ませた賢一郎は、その足で浮気相手の部下・村山静江(水月)と逢瀬する。
配役残り、大概女学生には見えない五月マリアは、売春で“自立”する泉の友人・アケミ、村井浩は単車でポン引き担当の彼氏。生徒が初潮を迎へたとやらで、保健室に生理用具を求めに来るファースト・カットが素頓狂な大杉漣は、総一郎高校時代の多分担任・浜倉か浜蔵か濱k(以下略)、右翼趣味の両刀使ひ。破廉恥にも白衣を剥くと下は全裸の香川留美が、同じく養護教諭・キョウコ先生。夢精の相談に訪れた総一郎の前で、浜倉とキョウコがオッ始め、呆気にとられる総一郎が自室で目を覚ますと、ベッドにはキョウコが横たはり本番で夢精を治して呉れるのは、何と二段階の夢オチ、流石に乱打に過ぎる。総一郎は、同級生であつた加藤の死を浜倉に報告。まるで意に介さない浜倉宅にて、薔薇族のエロ本を持ち出した浜倉に迫られるも、キョウコが訪ねて来たどさくさに紛れ総一郎は辛くも脱出する。飯島洋一は、総一郎が“ここの家の人が狂つてる”と助けを求める警察官、プリミティブにもほどがある。そこで踏み込んだ飯島警官が、浜倉に宛がはれるまゝキョウコを抱くのは、一旦底が抜けてしまつてゐる以上最早劇中現実なのか悪夢なのか判らない、照明的には後者なのだが。
ピンク三本を見て一旦終了した
筆の根も乾かぬ内に、DMMのピンク映画chに新着した中村幻児昭和56年第二作、買取系ロマンポルノ。どうでもよかないがピンク映画chを謳ひながら昨今新着するのは買取系ロマポとVシネばかりで、ピンクの新しい弾が本当に全然入らないのは如何なものか。愚痴はさて措き、総一郎は浪人生の一般的な憂鬱と、屈折した妹への情動を持て余し、帯子は満足に夫に構つて貰へぬシンプルな欲求不満を募らせる。“自立”と称した売春に二の足を踏む未だ処女の泉は、娘の同級生とは知らずアケミを買ふ父親の姿に衝撃を受ける。飄々と女遊びに明け暮れる賢一郎を除けば銘々が爆弾を抱へた、危なつかしい一家を舞台としたホーム・ドラマ。といつて本筋らしい本筋が起動するでもなく、浜倉とキョウコを気軽に動かせる飛び道具要員に配しあれよあれよと濡れ場を連ねるに終始する、ものかと思ひきや。“夢も現実も狂つてる”と出し抜けにマッドに振れるラストは反則スレスレの一発勝負ながら、ギリッギリの強度で切り抜ける。のんびりと電車が通過するロングに、叩き込まれるエンド・マークはまさかの“合掌!”。“合掌!”て、そんな映画見たことないし、これから出会ふこともまづあるまい。
純然たる劇映画にしていはゆるも何も“セミドキュメント”要素は皆無であることと、一応自身の緩さを自覚した帯子がセックスヨガ―何だそれ(´・ω・`)―に入会する、と口では語る件はあるものの、実際に名器づくりを特訓するシークエンスは一切ない。さうかう振り返ると、何から何まで豪快の一言しか見当たらない一作ではある。
挙句に、豪快なのは本篇だけに止(とど)まらぬ。ポスターに影も形も出て来はしない、竹村祐佳の名前がある件。買取系とはいへロマポといふと何となく格式高い印象を持つものだが、案外大らかな世界なのか?最初に観た昭和59年第二作「
ザ・SM 緊縛遊戯
」(脚本:吉本昌弘)があまりにも鮮烈であつたとはいへ、正直何となく中村幻児の鍍金が剥がれて来た感もなくはないのは内緒。
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