真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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人妻・OL・女子学生 狙つて襲ふ/DMM戦
な行
/
2015年05月05日
「
人妻・OL・女子学生 狙つて襲ふ
」(昭和55/製作:幻児プロダクション、の筈/配給:新東宝映画/監督:中村幻児/脚本:戸田博史/撮影:倉本和人/出演:朝霧友香・青野梨麻・笹木ルミ・高原リカ・立木レナ・飯島洋一・大杉漣・土方鉄人・戸田博史)。
今回ダウンロード視聴したのが、新東宝は新東宝でも新東宝ビデオ開巻のビデオ版「暴行 人妻・OL・女子学生」、しかも実際のタイトル・インは「人妻・OL・女子学生 暴行」。暴行云々といふのが云々狙つて襲ふの新版公開時の改題なのか、純然たるビデオ題に過ぎないのかは不明。挙句に、ビデオ版ではスタッフが脚本と撮影と監督しかクレジットされないまさかの大惨事。出演者中飯島洋一が本篇では変名の飯田洋一名義らしいのだが、飯島洋一そのまゝでクレジットされてゐる。
“八十分無制限のバイオレンストルコ”―どんな世界だ―で嬢のアケミ(笹木)が音を上げるのも構はず、精力絶倫の客その名も
獣太郎
(飯島)はガンッガン腰を振り、カメラも女の裸ではなく飯島洋一を抜く。一方、女社長の美沙(ビリング推定で青野梨麻)がインポの懐刀・小池(大杉)にバイブ奉仕させる社長室。全室モニタリングしてゐるのか、獣太郎の正しく雄姿に目を留めた美沙は、案外戦闘力の高い小池に獣太郎を連れて来させる。一人につき百万円で三人の女を犯す、旨いのか怪しいのかよく判らない仕事を美沙は獣太郎に提示。返事は明日の朝まで待つといつて、獣太郎を地下の電気機械事務所―単なる物置兼機械室―に監禁する、確かにバイオレンストルコではある。ところが鍵がかゝつてをらず、小池が不能なら、美沙も美沙で不感症。不毛な営みの繰り広げられる社長室に辿り着いた獣太郎に、美沙は五年前の過去を告白する。三人の男(土方鉄人・戸田博史と、何故かクレジットをスッ飛ばされる吉岡市郎)に輪姦、以来女の悦びと恋を失つた美沙はトルコ嬢から社長の座にのし上がり、復讐の機会を窺つてゐたといふのだ。獣太郎は快諾、勃ちもしない癖に小池をコーチ役に、スポ根感覚のレイプ特訓が開始される。もしも話が通るならば、
友松直之がリメイクすればいいのに
。
配役残り、三十五年を経た今の目にも些かなりとて古びず美しく輝く朝霧友香は、現在警察官の長田か永田(土方)の妹・ユカ、女子学生担当。立木レナは、歯科医の黒井(吉岡)の細君・タエコ、当然この人が人妻、ところで黒井の歯科医院の助手は不明。勿論荒木太郎2003年第四作「
女曼陀羅 七人の絶頂
」(脚本:内藤忠司)の主演女優とは同姓同名、といふかこちらが先輩格の高原リカは、弁護士の白川(戸田)の婚約者・サチヨかサチエ。劇中明示はされないものの、消去法でOL。
杉作J太郎が、初期は今作から拝借した杉作獣太郎をペン・ネームに用ゐてゐたことが知られ、軽く検索してみるに、それはそれとしてそれなりにいはゆるひとつのカルト作として認知なり浸透してゐると思しき、中村幻児昭和55年第九作。尤も、大御大・小林悟の、紙一重を超え無常観の領域にさへ突入しかねないドライなやつゝけ仕事。人知れず小屋の番組を圧倒的に支配する無冠の帝王・新田栄のツッコミ処過積載のパラダイス温泉、乃至は仏罰上等の尼寺映画。いつそ天衣無縫と見紛つてしまひたくなる、今上御大・小川欽也の大らかな無頓着。そして、最早ひとつの奇跡とでもすらいふほかない、ピンクの枠を通り越し日本映画の最終兵器・
関良平
。ついでに、ストイックなまでにマトモな映画を撮らうといふ気を窺はせない珠瑠美の名前辺りも想起してみると、ワーキャー騒ぐほどの然程の破壊力といふ訳では必ずしもない。文字通り動物的な絶倫男が特殊浴場の女社長に見初められ、かつて女社長を犯した男達の妹や細君や婚約者を狙つて襲ふ。確かにムチャクチャであるとはいへ、この程度の無体は量産型娯楽映画の豊潤な平野か不毛な荒野にはざらに転がつてゐる。長田から強奪した制服姿で獣太郎がパトカーの車内でサチヨを陵辱する一幕、ヒカシューの「プヨプヨ」が堂々と暫し流れるのは形容し難いスペクタクルではありつつ、意地悪をいへば単に音楽の富を奪取した話でしかない。獣太郎の粗野にして愛嬌もある絶妙な造形は琴線を激弾きし、腕つぷしでは全く敵はない反面、事セックスとなると完全に優劣が逆転する獣太郎と小池の仲良く喧嘩ぶりも裸映画の裸を忘れさせ愉快に見させる。逆説的な物言ひをすると中村幻児の演出力が下手に堅いだけに、珍作なり迷作の類といふよりは、普通にイイ味はひの昭和の映画を見たといふ印象が強い。三百万はユカに渡した獣太郎が、何時かの再会を約し不器用ながらも爽やかに別れるラストは映画を磐石に締め括る。
獣太郎が相変らず電気機械事務所に閉ぢ込めたユカに缶ジュースを差し入れする件、オールドペプシ(仮称)の250ml缶が懐かしい。話題作りの徒花咲かせももう飽きたから、ここいらでフルモデル・チェンジ以前の、誰が飲んでもコカ・コーラとの違ひが判つた昔のペプシを復刻して呉れないかな。
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