真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「白衣妻 不倫三昧」(1996/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・小山田勝治/照明:秋山和夫・真崎良人/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:国沢実/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:愛田るか・田代葉子・道本優里香・樹かず・小泉達也・リョウ・平賀勘一・青木こずえ)。
 深夜の南東京病院、階段の踊り場にて看護婦が入院患者(小泉)の尺八を吹く。「どんな手術や薬より、幸せなSEXの方が健康になれるのよ」と説き長瀬美加子(愛田)はそのままエッサカホイサカ挿入行為に突入、院内を見回る棚橋くるみ(青木)が、その現場に出くはし目を丸くする。フィニッシュは口内で射精を受けた美加子の、カメラ目線でタイトル・イン。日を改め病院屋上、くるみに詰め寄られた美加子は、サクッと看護婦を退職。曾祖母から受け継がれたとの薬草の処方箋と自身で培つたエンドルフィンの知識を頼りに、勤めを辞めさせた夫(樹)運転のライトバンで、知り合ひの元入院患者を訪問治療する大絶賛無資格医業を開業する。美加子によると、幸せなSEX→エンドルフィンの分泌→健康になれる、なのださうだ。性病や負担に耐えきれない心臓もエンドルフィンで治ればいいけどな、板垣恵介ばりのトンデモ理論ではある。美加子が最初に向かつた先は、大企業の部長で自宅療養中である栗山(リョウ)宅の、今や正確には“旧”旦々舎。民間療法の神秘主義だ気の流れが変るだと細君(田代)を説得力のない方便で外出させた栗山は、一人で訪れた美加子と要はイッパツ。スッキリするや「有難う、体の奥から生命力が甦つて来たやうな気がするよ」と宣ふが、何時も通りギラッギラのリョウ(=栗原良=ジョージ川崎=相原涼二)が、病を患つてゐるやうには初めから見えない。一方、美加子を放逐し意気揚々のくるみは、美加子が元患者の家々を回つてゐるといふ看護婦仲間の噂話(三人での会話、一人目の声は浜野佐知)を小耳に挟み、満ち足りて一旦は納まつてゐた闘争心を再点火される。
 配役残り平賀勘一は、栗山に続いて美加子が訪問する、関東テレビのプロデューサー・クミタ、漢字が見当もつかない。くるみに焚きつけられたクミタは、“病院を辞めさせられた元看護婦のセックス療法”を告発する番組企画を発案。道本優里香は、そんなこんなで美加子を直撃する関東テレビのレポーター、同伴するカメラマンは山崎邦紀。幻の女優といふ称号を冠して概ね語弊あるまい道本優里香であるが、脱がないその他端役でのエクセスと新東宝、そして公開順でいふと間に挟まれる三本柱の筈の大蔵(『痴漢日記 不倫を覗く』/監督:小林悟)と、一応三社を網羅してはゐる。
 随時開催、全五作からなる愛田るか映画祭。第四戦・大御大「痴漢チン入乱乳電車」(1998)、第三戦・山邦紀「超淫乱 愛田るか くはへたら放さない」(1997)に続いては、浜野佐知による初陣。DMMの設けた短いストーリー紹介に目を通してみたところ、美加子の信念として“どんな手術や薬より、幸せなSEXの方が健康になる”とある。となるとこれは、後々「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/主演:麻生みゅう)に於ける山科恒夫院長(平勘)や、「ノーパン白衣 濡れた下腹部」(2000/主演:佐々木麻由子/ともに的場ちせ名義)に於ける桃園里緒(佐々木麻由子)の信条に連なる、二作の母なる一作なのであらうか。だなどとその瞬間ときめいてしまつた、己の粗忽を俺は笑つた。目を開いてゐるか、閉ぢてゐるか。美人であることは確かに美人であるものの、基本二枚しか表情のない愛田るかは挙句に、エンドルフィンが云々と下手に長講釈を垂れさせると口跡の巧拙以前に、そもそも舌から回つてゐない。斯様に覚束ないエクセスライク迸る主演女優を狙ひ撃つは、トメに座る百戦錬磨の青木こずえ。美加子V.S.くるみの対立軸が演者の圧倒的な力量差に躓き満足に成立し得ない以上、物語的には無理矢理纏めるのが精々関の山、纏まつてはゐないのだが。ただ映画の神は、今作を見捨てはしなかつた、明後日だか一昨日な笑ひ処には妙に事欠かない。完ッ全に風俗店感覚で服を脱ぎながら登場する、ファースト・カットから笑かせる平勘が達する寸前に、「エンドルフィン!」と呻くのには『浦安鉄筋家族』かよと大笑させられた。会社まで辞めさせられて、単なる送迎といふ旦那の扱ひ自体が大概な上に、美加子が出張性感、もとい治療中、樹かずは外で待たせられる。様子を窺ふなり徐々に猜疑に駆られつつ待ち惚ける樹かず、カット変りその頃女房はといふとリョウや平勘の上でアンアン腰を使つてゐるといふ繋ぎはケッサク。どうやら映画の神が欠伸してる隙に、笑ひの神が降りて来たやうだ。挙句に、美加子の所業を樹かずに糾弾するに際してくるみ曰く「あの人はねえ、夫の貴方を外で待たせておいて、自分は余所の男とセックスしてるのよ」。快晴の空の如く一点の曇り無し、大正論極まりない、大体タイトルが既に白状してゐる。そこまではいいとして、そのままくるみが出し抜けに樹かずを誘惑したかと思ふと、御丁寧にもドアを全開にした上でライトバンでのカーセックスを敢行することに対しては、突つ込むのが野暮といふもの。それでは何か、貴兄は青木こずえの裸が見たくないと仰せか。ここでくるみの濡れ場を無理矢理にでも捻じ込むのは、プログラム・ピクチャーのプログラムされた部分ではない、ジャスティスだ。


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