真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女曼陀羅 七人の絶頂」(2003/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:内藤忠司/撮影・照明:前井一作/編集:酒井正次/音楽:安達栄治・セロハンズ/助監督:田中康文/制作:小林徹哉/出演:高原リカ・佐々木基子・愛羽・風間今日子・里見瑤子・葉月螢・佐倉萌・柳東史・滝川鯉之助・荒木太郎・小林徹哉、他)。
 カズオ(柳)が七つ年上の暴力妻・マサコ(佐倉)の尻に敷かれる吉川夫婦、ある朝、出勤するカズオの朝食もそこそこに新聞を開いたマサコは仰天する、三千万の宝くじが当たつてゐたのだ。その日から人が変つてしまつたマサコは酒に浸り、カズオも仕事に行かせて貰へず頭を抱へる。そこに、無断欠勤を続ける部下を案じた、カズオの上司・内田(荒木)が家を訪れる。巨根を誇りつつも勃ちの悪いカズオをマサコは放り捨てると、内田を相手に肉欲に溺れる。居場所を失したカズオはマサコに愛想を尽かし、何処ともなく家を捨てる。山間の村を歩くカズオは、行き倒れた盲目の少女・栗原小百合(高原)を介抱、手際の良さに、居合はせた村人(不明)はカズオを医師と勘違ひする。あれよあれよといふ間に、カズオは小百合の姉で元看護婦の水城良子(佐々木)と共に、無医村であるその村で診療所を始める羽目に。患者役で更に五、六名登場。良子に偽医者であることを見抜かれたカズオは、村から逃げる。廃校のグラウンドで鞭打たれる女を助けようとしたカズオは、AVを自主制作する女子大生の大田原リカ(愛羽)・ルミ(風間)の姉妹に出会ふ。ルミによると、“女が撮る、女の為のAV”であるとのこと。リカとルミなどではなく、ハマコとサチコにでもして怒られてみればよかつたのに。何故だか即座にAVプロデューサーであると二人を言ひ包めたカズオは、リカとルミの力も借り、地主(小林)から出資金と称して金を引き出す。今回小林徹哉は、濡れ場の恩恵にも思ふ存分与る。良子の通報で医師法違反による自らの捜査が始まつてゐることを知つたカズオは、再び姿を消す。道すがら、郵便局でカズオは何者かに送金する。今度は良子、もとい佐々木基子の向かうを張つてか髪を綺麗に剃り落とし、カズオは滝に打たれる。そんなカズオの姿に、流行り病で住職である夫を喪つたばかりの神宮寺桜(里見)は心を奪はれる。カズオを寺に引つ張り込んだ桜は、一物を御神体に村人の信奉を集める。僧侶なのか檀家なのか坊主軍団の一員に、自らも頭を丸めた荒木太郎が再登場。一方、女刑事・二宮綾弥(葉月)はカズオを追ふ。瞽女志望の小百合の弾く三味線も担当する滝川鯉之助は、綾弥とは肉体関係にもある後輩刑事、劇中“鯉之助”とそのまま呼称される。
 改めていふまでもなく、高々六十分に過ぎない尺にしては少々エピソードを詰め込み過ぎで、女優の頭数も並べ過ぎである。文字通り、濡れ場の乾く暇もないといつたところで、物語が一応つつがなく流れはするものの、一向に深まつては行かない。度々ロスト・アイデンティティーを嘆くカズオに対し、綾弥がシンパシーを寄せる件などは見事なまでに未消化以前の無消化に止(とど)まる。スポーツカーばりのシャープな足回りと、ダンプカー並みの馬力とを誇る松岡邦彦であつたならばまだしも、何時までも瑣末で無用な、いはゆる作家性とやらから脱却し得ない荒木太郎には、所詮過ぎた相談といへるのであらう。とはいへ、その企図したところは全く果たせてゐない訳では必ずしもない。ピンク版「街の灯」ともいふべきラスト・シーン、それまでは持て余した巨根を女達に貪られるばかりで、始終騎乗位の下に甘んじてゐたカズオが終に採用する正常位には、転遷の果ての着地点が明確に表れてゐる。遡つて良子の濡れ場は、サスペンス的緊張度も含めて、底の浅いにもほぢがある物言ひになつてしまふのは心苦しいが、そこにセックスがある必然性に満ち溢れてゐる。単なるノルマごなしに終るのではなく、そこに女の裸があるからこそ、なほのこと映画として深化するピンク。といふ荒木太郎が事ある毎に公言する理想は、万全ではないにせよ最低限形にはなつてゐる。これでもう少しヒロインが美人で細ければ、クライマックスの決定力で映画全体の印象も大きく変つてゐたのではなからうか、とも惜しまれる一作ではある。

 もう一人の新人女優で、更に太い愛羽に関しては、リアルタイムでm@stervision大哥が“ボンレスハム”と激しく痛罵されてをられる。全くその通りであるといふか・・・・・美味しいボンレスハムさんに失礼です>< 躁状態を思はせるくらゐに変にノリノリな辺りが、火に油を注いで癪に障る。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 尾道の大和 マル秘性犯罪... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。