真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「桃尻姉妹 恥毛の香り」(2004/製作:丹々舎/提供:オーピー映画/監督:浜野佐知/脚本:山﨑邦紀/撮影・照明:小山田勝治/撮影助手:大江泰介・宮永昭典・花村也寸志/応援:堀部道将/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:田中康文・三浦麻貴/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:岡崎一隆/キャスティング協力:株式会社スタジオビコロール/出演:北川絵美・野上正義・平川直大・吉岡睦雄・北川明花)。本篇クレジットに於いて、北川明花の下の名前には“さやか”と読み仮名がふられる。
 プラザホテル1295室から、如月(北川絵美)が東京の街を見渡す。「この東京に、私の妹がゐる」。如月と三つ下の妹・弥生の両親は、弥生が未だ一才の時に事故で死去する。如月と弥生は別々の親戚に引き取られるが、弥生を引き取つた藤倉家との音信がその後途絶え、姉妹は生き別れる。十八年後、弥生が結婚するとの報せが、相手の間宮林輔から如月の下へと届く。ところが十九の弥生(北川明花)に対し、間宮(野上)は七十近い老人であつた。如月は、不憫な妹が五十も歳の離れた男の獣欲の犠牲にならうとしてゐるのではあるまいかと早とちりし、俄然上京しての弥生奪還を期したものだつた。呼びもしないのに恋人・原修 (平川)も如月の後を追ひ東京に出て来る一方、如月は鼻息荒く間宮家に乗り込む。ところが如月を待つてゐたのは、弥生の方から望んだ結婚であるといふことと、間宮の余命は半年といふ二つの驚くべき事実であつた。そんな次第で「余命半年の花婿」といふ寸法では、勿論のこと絶対にない。間宮家こと浜野佐知自宅に忍び込んだ藤倉英志(吉岡)が、庭の茂みの中から弥生に鋭く、そして歪んだ視線を送る。英志は藤倉家に引き取られたと未だ知らなかつた弥生を陵辱し、その関係は以降続いた。そんな弥生を藤倉の家から救ひ出したのが、間宮であつたのだ。
 動の如月と、静の弥生、鮮やかに対照的な姉妹を描いたドラマである。未成年の妹の、あらうことか既に男性機能も失した老人との結婚を軸に、英志を動因に据ゑた起承転結は、実に手堅く纏まつてゐる。手堅い反面、手数と工夫とには欠くきらひのなきにしも非ずといつていへなくもないものの、その分潤沢に、実際に従姉妹同士でもある北川絵美・明花の裸は潔く三番手の濡れ場要員を排した賢慮にも加速され、タップリと堪能させて呉れる。間宮や原のといふ訳には必ずしも行かないが、そこは初めから品性下劣な悪役たる英志の妄想といふ形を採つて、如月と弥生の姉妹丼を見事披露せしめてみせた点は完全無欠、超絶怒涛に正しい。観客の見たいものを見せる、それが娯楽映画として最も然るべき姿である筈である。薄味な展開の中で、北川絵美のアクティブを上手く受け如月の尻に敷かれ気味の情けない彼氏を好演する、平川直大のアクセントも随所で効果的に機能する。そして最も特筆すべきは、珍しく控へ目などころか、殆ど殊更に前に出て来ない攻撃的女性主義の代りに、一般映画殴り込み第二作「百合祭」(2001)以降、折に触れ提出される浜野佐知の第二テーマ。必ずしも剛直を伴はぬ男女の性行による愉悦といふエモーションが映画を穏やかに、然れども同時に力強く映画を締め括る。一見すると北川従姉妹の裸はてんこ盛りではあれ粒の小ささも錯覚しかねない一時間とはいへ、浜野佐知の静かな、さりとて強い眼差しと、頑丈な映画的手腕とを感じさせる一作である。
 全くの蛇足ではあるが、オーラスの弥生と、終に勃起は叶はぬまゝの間宮とのセックスに関して。久須美欽一どころか同じガミさんであつたとしても、これが新田栄であつたとしたら何が何だか何時の間にか勃つてしまひ、「勃つたよ、勃つちやつたよウワーイ!」とでもいはんばかりに、エッサカホイサカ致してハッピー・エンド―但し底は抜けた―とならうところである。それはそれとして、まあアリかと思へなくもないのだが。尤も、視座としては兎も角、主要客層に対した方便なりファンタジーとしてならば、勃たずじまひの浜野佐知と勃たせてみせるたとへば新田栄と、現時点で流石に己が勃起不全の懼れに慄く年齢ではないのもあり、どちらがより相当なのか俄には判断し難い。

 ところで、北川絵美・明花の共演作といふと翌年にもう一本あるのだが、何を考へてゐるのだか何も考へてゐなかつたのだか贅沢にも、友松直之の「挑発する淫ら尻」に於いての北川従姉妹は、全くといつていいほど絡まない。


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