真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「藤小雪の逆泡踊り天国」(1992『《秘》潜入逆ソープ天国』の2006年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:田中譲二・河中金美・植田中/照明:秋山和夫・斗桝佳之・安田信昭/音楽:藪中博章/編集:酒井正次/助監督:森山茂雄/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:藤小雪・八萩純・桑原かをり・平賀勘一・芳田正浩・栗原良)。
 動物行動学助教授の梶木哲二(栗原)に、女子大生の西原かえで(藤)は秘かに想ひを寄せる。そんなかえでを狙ふ先輩の斎藤わたる(芳田)は、梶木の黒い噂をダシにかえでを酒に誘ふ。梶木は裏で、風俗のサイド・ビジネスを行つてゐるといふのだ。半信半疑ながらにかえでが尾行してみたところ、梶木は雑居ビルに消えて行く。梶木とすれ違ひに、ビルからは同級生(?)で人妻の日出島真紀(八萩)が出て来た。ビル内にある女性用特殊浴場、いはゆる逆ソープに行つて来たところだとのこと。逆ソープの悦楽を勧める真紀を余所に、かえでは梶木に対する黒い疑惑を確信へと変へる。もののそれにも関らず、かえでの梶木に対する恋心はいや増して燃え盛るのであつた。
 山﨑邦紀が脚本を書くと、登場人物に知識層が出て来る場合も多い旦々舎映画ではあれ、その中でも、栗原良(=リョウ=ジョージ川崎=相原涼二)が眉間に皺を寄せながら、研究者役を無闇に熱演する例は矢鱈と多い。今作の特色は、元々ピントの外れた研究に没頭する梶木が、更にアクティブにピントを外した勘違ひヒロインに翻弄され当惑するといふ、ミイラ取りの前に、ミイラよりもミイラなミイラ取りが現れるかの如きクロスカウンター的展開。途中までは類作と大して代り映えしない映画が、急に何時もとは違ふ様相を呈して来る様は実に鮮やかである。
 友人・河合英二朗(平賀)の経営する逆ソープに出入りする梶木の真意は、店内に隠しカメラを仕掛けた、研究用データの収集にあつた。何れにせよ、公序良俗にオフェンシブに反してゐるのは兎も角、梶木の研究テーマとは、当時邦訳が出版されたばかりの『ボディ・ウォッチング』(デズモンド・モリス著)に想を得た、「エクスタシーに於けるボディ・ウォッチング」。主著『裸のサル』も未読のモリスに関して戯れに調べてみたところ、『ボディ・ウォッチング』とは“ヒトの身体には、どんな意味が隠されているのか?”をテーマに、20パーツに分けた身体各所に解剖学、心理学、民族学的アプローチから人々が各々に付与して来た意味の数々を解説する、といふものであるらしい。疑似科学、あるいは半科学に基づく読本といつた類なのであらう。尤もとはいへ、劇中梶木の「エクスタシーに於けるボディ・ウォッチング」なる研究テーマの内実は、相変らずサッパリ見えて来はしないが。研究室にて編集機器を操作しながら、逆ソープに喜悦する女達の映像を凝視する梶木の姿は、盗撮ビデオを編集してゐる人にしか全く見えない。
 そんな梶木に対して、暗黒街の助教授―わはははは!―と勝手な妄想を膨らませるかえでが繰り出すポップな空想の数々と、頭のネジの外れきつた不思議ちやんに振り回される栗原良の困惑ぶりとが今作の白眉。判り易く紗をかけたイメージの中、グラサンに渋く暗黒街の助教授を気取る栗原良に、買春組織にすら売られてしまふ可憐な悲劇のヒロインを演じる藤小雪。時に娯楽映画には、判り易過ぎるくらゐがちやうどいい、さういふ匙加減もあるのだと思へる。それにつけても暗黒街の助教授、何度思ひ返しても笑へる。
 桑原かをりは真紀と同じく、かえでの同級生かも知れないOL・町野浩子。男日照りの相談を持ちかけた真紀に勧められた河合の逆ソープに、三人の中で初めて向かふ。何気なく体の美しい女を三人揃へた磐石の布陣の中でも、和人形のやうな端正な顔立ちに大きく丸々としたオッパイを誇る藤小雪の、梶木を想ひ派手な自慰に溺れる濡れ場と、梶木のカメラを意識した上で殊更に扇情的な体位で河合に抱かれる絡みは、恐ろしいくらゐに強力である。


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コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2017-06-27 01:41:39
平賀勘一が当時としては珍しく黒ビキニでしたw
いつもは白ですw
しかし何時見ても胸毛がすごいw
 
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