真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「水沢早紀 愛人の性・羞恥心」(1994『水沢早紀の愛人志願』の2002年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志・小山田勝治/照明:秋山和夫・永井日出雄/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:佐々木乃武良・戸部美奈子/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:斎藤秀子/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:水沢早紀・松下英美・水樹千春・摩子・平賀勘一・杉本まこと・栗原良)。
 開巻、後ろ手に体を支へ腰を高く突き上げた水沢早紀が、M字開脚で腰をグイングイン上下にグラインドさせながら、「ねえアタシを、アナタの愛人にしてえ☆」と悩ましげも突き抜けて訴へかけて来る。浜野佐知は、いきなりギアをトップに入れる。浜野佐知はと書いたが、そもそもエクセスに於いて、しばしば採用される先制攻撃ではある。
 女子大生のアサミ(水沢)は慎み深く、どちらかといへば消極的な性格で、付き合ひ始めて一年にもなる先輩の彼氏(呼称されないゆゑ役名不明/杉本まこと)とのセックスでも、恥ぢらひを隠せず彼氏をヤキモキさせる。アサミは研究室の教授・松浦(栗原良、あるいはリョウ、もしくはジョージ川崎、又ある時は相原涼二)の紹介で、高山(平賀)の出版社でアルバイトを始めることに。松浦にとつて高山は研究室のスポンサーで、高山から研究費を援助して貰ふ見返りに、松浦は高山にアルバイトと称した、要は愛人の女子大生を紹介してゐた。ある日アサミは高山に原稿を届けた帰り、平素は使つてゐない筈の雑居ビルの三階に彷徨ひ込む。そこは占ひ師の館、黒づくめの衣装に顔の下半分をショールで隠した、判り易すぎる扮装の占ひ師(摩子/ワンシーンのみ登場/不脱)はアサミにいふ。「貴女は自分の性格を誤解してゐます」、「もう直ぐ別の貴女が出現するでせう・・・」。それ以来、アサミは時代を超え得ないヴィヴィッドなボディコンに身を包んだ、奔放な淫乱女に変貌してしまふ。杉本先輩が戸惑ひを隠せない一方、松浦と高山は、反転したアサミを巡り醜い争奪戦を展開する。
 松下英美は高山の部下、こちらも呼称されない劇中固有名詞は知らん、高山とは男女の仲にもある。水樹千春は、松浦研究室のヒカリ。ヒカリもヒカリで、松浦と肉体関係を持つてゐた。
 とかいふ次第で、杉まこパイセンはひとまづ措いておくとして、奥手な女子大生から奔放な淫乱女に変身したアサミと、アサミを巡り醜く争ふ二人の男、と更に男達とそれまで交際してゐた二人の女。手短にメイン・プロットの四角関係を纏め上げると、本性を表し醜く争ふ男に、結局女は愛想を尽かし去つて行く、といふ好色で利己的な男供に冷水を浴びせかけるラスト―アサミは元に戻り、杉本まことと元通りの鞘に納まる―は、如何にも浜野佐知らしい。加へて女性美への愛を公言する浜野佐知だけあり、勿論濡れ場に於ける桃色の破壊力も満点。更に、隠された人の本性を顕かにする謎の占ひ師、といふ如何にも山﨑邦紀らしいギミックまで登場。飛躍力のある物語を六十分で無理なく見させ、量産型裸映画としての商業的要請もきつちり果たし、なほ且つ監督・脚本家双方の作家的志向ないし嗜好をも満足させる。正しくプロフェッショナルの仕事と呼ぶに足りよう、さりげなくも、博多から小倉にまで足を運ぶ値打ちのある佳篇である。たとへば映画の撮り方を忘れる以前の瀬々敬久のやうな、決定的で絶対の傑作といふのも勿論それはそれで素晴らしいのはいふまでもない。とはいへ話はそこに止(とど)まらず、かういふジャンル映画の枠内から一歩も踏み出でるでもないまゝに、手堅く仕上げられた職業作家の佳篇といふものを、当サイトとしては怠ることなく拾ひ上げて行きたい。と、今年も意を強くする所存である。

 年が明けたとなると、要は恐ろしくも十三年もののクラシックともなる今作。一際目を惹くのは杉本まこと(現:なかみつせいじ)の、煌く若さ(笑。別人のやうな恋人の姿に困惑させられる好青年を、文字通り好演する。


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