ススキは辞書では「薄」と「芒」で載っている。芒とも書くという辞書もあるが意味はほぼ同じ記述。秋の七草、野山に映える多年草。毎年、主根から新芽を生じ秋には大きな株になり白い尾のような花穂は風に吹かれて光り、詩歌の好題材となる。屋根ふきにも使う。
遊歩道沿いの中州に群生していた芒も、草が亡くなるという字のごとく枯れて倒れ、一面が枯れたススキの姿はなく薄い褐色の絨毯のようになっている。川風に吹かれ白く光っていた姿からは想像もできない。やっと春からの長い営みを終え、次へ伝え残す仕度をし終わって横たわっているように思える。また、そこには一つの営みを終えたという安心感が伝わる。
ススキといえば、森繁久彌があの独特の声と節回しでもの悲しそうに歌う野口雨情作詞、中山晋平作曲の「船頭小唄」が耳の奥に残っている。この歌は1921(大正11)年1月に、民謡「枯れすすき」として世に出た。その後、船頭小唄にかわり多くの歌手に歌われ映画にもなった。今年は歌われ始めて100年、心に残る歌のひとつだ。
船頭小唄では1番で枯れすすき、3番ではススキに似ているが水辺の生きる真菰が歌われている。これも芒と同じく群生するイネ科の多年草。船頭小唄は二つの植物に人生の哀を共感するところがあってヒットした曲という。演歌や民謡に込められた哀調を帯びる、哀愁が漂う、そんな心情は日本人の遺伝子に刷り込まれているのかもしれない。