福岡市のカレー店が、店内では黙って食べる「黙食(もくしょく)」を呼びかけたところ、店主は言葉狩りにあうかもしれないと心配した。ところが店主の心配は外れ「分かりやすい」と客からは好評、活用したいという店もある、そんな報道をアイディアだなと思いながら、素人作には思えない呼びかけのビラに、これなら受けると思った。
1年前のコロナ発症の頃にはパチンコ店の営業を強く規制し、応じない店名は公表していた。次の感染拡大からは飲食店がそれに変わった。緊急事態宣言下では苦しい経営状況が何例も報道され助けたいがそこには行けない状況にある。今後は過料が課せられるより厳しい規制になる。そんなことから黙食が生まれた。
月2回の陶芸教室、公共施設だけに食事時の会話は気を遣う。四方から利用すれば4人用のテーブルを1人で使用し、眼下の瀬戸内海を見おろしながら定食を食べる。この時はマスクを外すがほとんど無口、黙食になっている。窓辺以外の席は仲間の背中を見て黙食をする。飲食店では厳しいだろうが感染防止のためには黙食がいい。
黙食の報道を見たとき昔々、子どもの頃の我が家の夕食を思い出した。3世代が一つの食卓を囲んで食べる。肘が当たりそうな間隔しかない。遊びや学校の話が出るとにぎやかになる。すると「黙って食べろ」と寡黙な祖父はたまに不機嫌な口調でたしなめていたのは70年も前のこと。祖父の好きだった静かな食事、黙食の2文字を見ているだろうか。