公園の松の木、冬になるとその大小にかかわらず地面から1㍍ほどのとこに「こも」が巻かれる。巻かれるのは立冬の頃で、翌年の啓蟄の頃にこの装いを取り外す。この様子はローカルTV局では必ずニュースになりそのどちらも放送され、季節の変わりを教えてくれる。松の木が冬の寒さに負けないように防寒用に巻かれた腹巻のようで、見ていると温かそうだし冬の風物詩として親しまれている。
よく知られているようにこの「こも」は防寒用ではなく松を病害虫から守るという重要な任務を負っている。害虫はマツカレハと呼ぶそうだが、この幼虫が冬には地中で過ごすため幹を下るのでこれを途中で捕らえるという。捕らえた虫は「こも」と共に燃やし駆除する。最近は薬剤散布などでその効果は云々といわれるが、風物詩としては楽しめる。
「こも」は稲わらで荒く織った「むしろ」、透かして見ると向こうが見える。祝いの宴で鏡開きとして使われる日本酒の入った樽に巻かれているものと同じ。松だけでなく公園などの樹木などを寒さから守るために木全体を覆ている写真もある。植物には大切な冬の羽織もののようだ。
散策する公園には200本ほども松があるそうだが、このすべてに巻き終わるのに1週間あまり要するという。コモの縛り方は、上側は緩く、下側はきつく縛る。これは、虫が入りやすく、地面に抜け逃げしない巻き方という。縛る紐も稲わらで作った藁縄、これで縛れば弛むことはない。官僚になると決めた時の初心、それを藁縄でしっかり心に縛って職務にあたれ、最近の霞が関に強く思う。