日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

葬送の歌

2021年01月25日 | エッセイサロン
2021年1月25日 中国新聞洗心「明窓」掲載
 昨年8月に参列した、86歳で亡くなられた方の葬儀が心に残っている。精進落としの静かな食事が始まると、白樺、青空、南風-。会場内に、こぶしを利かせた歌声が音量を落として流れ始めた。そう、千昌夫さんの「北国の春」たった。
 故人は息を引き取る少し前、かすかな声で「歌が聴きたい」とつぶやき、「北国の春」など、いくつかの曲名を挙げたそうだ。家族は最後の望みと思い、すぐにその曲を探して聴かせた。目を閉じて聞いているその顔は、遠い記憶を呼び戻し、喜んでいるようだったという。
 葬祭場で流れた曲はどれも情感と哀調を帯びていた。故人の人柄を思い出させるような曲ばかり。仕事での喜怒哀楽などを乗り越えた証しの曲にも思え、在りし日をしのびながら聴くことができた。
 ほかにも心に残っている出棺の光景がある。それは登山を趣味としtいた知人の葬儀でのこと。山の仲間かダークダックスの「山男の歌」を合唱し、故人を見送った。友情に満ちた葬送の調べだった。
 胸の奥深くに流れていた曲だったはずだ。働く力になった曲、家族、周囲への感謝を表す曲でもある。彼岸でもぜひ歌い続けてください。
コメント (2)
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