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池上永一「テンペスト」(上下):角川書店

2009年08月16日 | 「Weekly 読書感想」
テンペスト 上 若夏の巻
池上 永一
角川グループパブリッシング

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 浦添美術館所蔵の「黒漆雲龍螺鈿丸盆」を写した上下1000P近い絢爛豪華なハードカバー上製版。「テンペスト」とは”暴風、嵐“の謂。日清間で翻弄、”廃琉置県“日本に併合された琉球王国の物語。筒井康隆や北上次郎達の絶賛にも拘らず、正直私には城内裏表を行き来する主人公宦官の設定や“帝国主義や近代”果てはデカルト等々のフレーズ・台詞の登場には荒唐無稽とまでは言わずともアナクロニズム、さらに横暴・ベッテルハイム宣教師描写の一方、明晰・首里天加那志と類型パターン記述に違和感を覚え、正直途中で何度も放り投げそうになりました。かさばるハードカバー、通勤電車鞄に入れヒーヒー言いつつ何とか読了(´Δ`;)
 とは言え、首里天加那志、三司官、評定所、表15人衆、聞得大君、大勢頭部、あごむしられ等々王国表裏のヒエラルキー、世添御殿、御内原等々首里城郭内の詳述はまるで臨場レポート。私より30歳大学後輩、石垣の生まれのこの気鋭の著者、書中至る所に漢文、英文、ストリー展開の要所にオリジナル琉歌を散りばめるその才気には感嘆!それはまるで科挙に匹敵する琉球王国の試科に最年少で合格、王国で活躍する主人公の宦官“寧温”は著者の自叙伝を思わせる。
 もっとも、沖縄文学界の泰斗・大城立裕氏は余程腹が立ったのか、県内紙でこの池上引用?の琉歌に感情的とも思える批判を書いている。

 当時の琉球王国は本島、先島、奄美から成っていたにも関わらず、八重山の頻出に比べ、“いつ出るかいつ出るか”と期待していた奄美は下巻末尾にようやく一行だけ登場する。明らかに著者出自の八重山著述傾斜は止むを得ないか。ここでも琉球史に於ける奄美の欠落、喪失を感じました。
                     
コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (大城)
2009-08-17 09:56:03
 その荒唐無稽さには、さすがの貴兄もあきれ果てましたか。しかし、筆力は確かなものがあります。これからどのようなものが出てくるのでしょうか。従来のウチナワとは異なる新ブンヤ開拓とすれば、頼もしいものがあります。   

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テンペスト、読破いたしました。 (Unknown)
2009-08-17 13:23:55
 素晴らしい作品ですよね。登場人物のひとりひとりや情景が大変楽しめました。真鶴・寧温の2役も、なぜか自分と重ねる部分も多かったのが印象的な作品でした。

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