テンペスト 上 若夏の巻池上 永一角川グループパブリッシングこのアイテムの詳細を見る |
とは言え、首里天加那志、三司官、評定所、表15人衆、聞得大君、大勢頭部、あごむしられ等々王国表裏のヒエラルキー、世添御殿、御内原等々首里城郭内の詳述はまるで臨場レポート。私より30歳大学後輩、石垣の生まれのこの気鋭の著者、書中至る所に漢文、英文、ストリー展開の要所にオリジナル琉歌を散りばめるその才気には感嘆!それはまるで科挙に匹敵する琉球王国の試科に最年少で合格、王国で活躍する主人公の宦官“寧温”は著者の自叙伝を思わせる。
もっとも、沖縄文学界の泰斗・大城立裕氏は余程腹が立ったのか、県内紙でこの池上引用?の琉歌に感情的とも思える批判を書いている。
当時の琉球王国は本島、先島、奄美から成っていたにも関わらず、八重山の頻出に比べ、“いつ出るかいつ出るか”と期待していた奄美は下巻末尾にようやく一行だけ登場する。明らかに著者出自の八重山著述傾斜は止むを得ないか。ここでも琉球史に於ける奄美の欠落、喪失を感じました。