![]() | 菓子ひとすじ―わが心の自叙伝比屋根 毅神戸新聞総合出版センターこのアイテムの詳細を見る |
15歳で単身、故里・石垣を出奔、一代で売上165億、従業員430名の高級洋菓子店㈱エーデルワイス・グループを立ち上げた著者の自叙伝。30回に亘り「神戸新聞」にコラム連載された150ページ足らずの小冊子本書、少1時間で一気に読了しましたが、業界は異なるとは言え同じ創業社長、そのスケールの違いに圧倒されました。
菓子業界には疎い私ですが、一般に“包丁一本さらしに巻いて”と言われるように腕前に自負のある名人・職人気質と資金調達、折衝力、組織構築力等が要求される経営者はそもそも資質が相反すると看做なされますが、著者は菓子職名人として国内外で数々の入賞、受賞しつつ、経営者としても今日大成したのは、どこに由来するのか。
成功事例を見ると、得てしてその育ち、両親の影響、果ては育った地域風土等の影響を知りたくなりますが、本書を読む限り、猪と幼少の著者を戦わしたという信じ難い祖父のエピソード以外その影響を読み取れない。
私はかって“商売の宮古、文人の八重山”と書いたことがありますが、著者や関東で売上230億、従業員660名の㈱オーム電機を創業した新里和英氏や琉大卒として初の東証一部IT企業のトップに上り詰めた浦崎元社長はいずれも、八重山・与那国の出身で等しく10名近い兄弟。
いま、公的補助や支援融資等ベンチャー育成策が盛んですが、著者はじめこの3人はこうした公的支援制度とは一切無縁、挙手空拳それこそ“腕一本脛一本“で今日の偉業を成し遂げている。こうした事例を見ると“孤島苦、兄弟間の切磋琢磨こそ汝を玉にする”と言いたくなります。
当年73歳の著者、今も空手練習、毎朝六時起床、一時間以上の腹筋、背筋運動を40年も続けて、就寝前には欠かさず日記を綴っている。まさに、超人、克己、さらにその本業一筋の集中力には圧倒されました。
高校入試を白紙で提出、単身那覇に出奔、さらに本土へ、そして企業が軌道に乗り始めるや首都圏東京、ヨーロッパへと躍進した著者の進取マインド、これから世に出る県内若者にぜひ読んで欲しい著書です。
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(琉球新報社さんから書評依頼を受け7月26日・日曜読書欄に掲載されました)