”朝吼夕嘆・晴走雨読”

「美ら島沖縄大使」「WeeklyBook&Reviews」「マラソン挑戦」

松尾文夫「銃を持つ民主主義」(小学館)

2004年04月26日 | 「Weekly 読書感想」
 元共同通信ワシントン特派員による400ページの大著。
私の所属するシビタン・クラブ例会で著者の講話と著名入りで頂いた。 日経で紹介されたもののそれほど興をそそられなかったが、 読み始めると改めてアメリカという国に対する私の蒙を開いてくれた。

 ソマリア、アフガン、イラクと続くアメリカの出兵・制覇の海外行動パターンと 例のチャールトン・ヘストンを会長に仰ぐNRA(アメリカ・ライフル協会)という 国内圧力組織のカルチャーの源流をメイフラワー号「プリマスの誓い」、対英独立、南北、 対インデアン各戦争、果ては英国の「権利の憲章」にまで遡って説明している。
 さらに無差別夜間東京大空襲を企画・実行し、ソ連やベトナムへの先制原爆投下を 主張したルメイ将軍に日本政府は勲章を贈ったのに対して、ドレスデン市への同じ無差別攻撃への 戦後ドイツの厳しい対応の違いを歪な日米関係の原型として何度も触れている。
 幅広い在米人脈で著述は広範囲に及ぶが、ケネディへの評価は厳しく、 対してニクソンやブッシュへの評価は公平だ。

 講話の後、松尾さんは小渕内閣や野中元大臣のサミット誘致を含めた沖縄政策に批判したが 「沖縄の地政学的立場が招いた歴史的事態」という私のコメントに大いに賛意を頂いたのが印象に残った。

(写真:はシビタン例会と前列中央は著者の松尾氏)
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WUB東京会長退任のご挨拶

2004年04月23日 | 「美ら島沖縄大使」便り
メセナとまでは言いませんが、99年以来、今日まで足掛け6年に亘り、世界中に移住する沖縄県人ビジネスマンのネットワーク組織WUB(Worldwide Uchinanchu Business Association)の東京会長を務めて参りましたが、2004年4月のWUB東京総会において任期満了で退任致しました。後任会長として現監事の長嶺さんが選出されました。

在任中、ロス、沖縄、東京、ボリビヤ、ハワイと5回の世界大会に参加しましたが、今年、来年はアルゼンチン、ペルーと南米で行われます。南米・ハワイはなんと言ってもWUBの源流です。こうした大会に臨む東京会長としては、南米帰りでブラジル銀行OBである長嶺さんをおいて他にないと思います。

在任中の最も記憶に残ることは多くの皆様の応援により9.11テロを乗り越え、2001年10月に開催されました「第5回WUB世界大会東京」でした。この開催を含め、不束者の私を今日まで支えていただいた会員並びに支援の皆様に改めて厚く御礼申し上げます。

今後は一会員・顧問として長嶺会長を支えて行きたいと思います。長い間本当に有難うございました。

会長退任に際し、総会で頂いた記念泡盛と花、感謝を込めてご紹介します。
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Annie Ernaux 「Passion Simple」(早川書房)

2004年04月21日 | 「Weekly 読書感想」
 う~ん、知る人ぞ知る書。「この本、読むの!」と言われそうですが、さる人からの頂き物。 ご存知一日の往復電車で読み終えたほどの本体ボリュームですが、末尾の解説の方が長いくらい。 出会いも別れもストーリーも一切抑制し、感情というよりひたすら自分の感覚本能体験を直視し、 切り取り、忠実に抽出描写している。

 「恋の行き着く先は恋、果てまで行く。果てとは二人で暮らしたり、添い遂げることでない。 恋のための恋。そんな恋をすると苦しいが幸せ」と言切る著者の強さと凄さ。

 それにしても、成人した子供もいるこの離婚経験者が高校教師退職後に父を語り、母を描き、 遂に自分の性愛感覚を微細余すところ無く情緒を一切排して硬質に描く。 別れた夫や子供、教え子の思惑を超える私と同年のこの著者の表現欲に参った。

 こんな本に接すると直ぐデュラスの「ラ・マン」といい「フランス女流文学は」と論ずるのは安易ですね。
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三島由紀夫「私の遍歴時代」(ちくま文庫)

2004年04月12日 | 「Weekly 読書感想」
 大蔵のドンと言われた元次官・東証理事長の長岡實氏がいま連載中の 日経「私の履歴書」の中で三島と大蔵時代の同期であったこと、 自殺した東大高利貸の「青の時代」主人公と同寮だったこと、 「潮騒」を巡るエピソードや衝撃の自決の半年前に会ったことなどを書いている。 本書読書中のこうした偶然のシンクロナイズはよくある。

 昭和32年から自決の45年までの大小16篇のエッセイ。 三島フアンにとって「何をいまさら」だろうが、「笈を負って上京する少年の田舎くさい野心」 への生理的嫌悪感は印象に残る。 三島のような学習院、東京出身の者には私を含めお登りさん達の「青雲の志」に対する こうした心情があることを改めて認識した。

 琉大中退上京し、早大政経、法学に不合格、文学、教育、慶応法学、明大商学の4学部に 合格した私は早大文学と慶応法学(政治)の双方どちらに行くか迷った。 早稲田を選んだのは当時沖縄出身の大浜総長の存在以外に慶応では三島が言うお登り根性への嫌悪を 密かに恐れたから。慶応人にそうした心情があったかどうかはともかく、40年ぶりにあの進路際の迷いを思い出した。

 最後の短エッセイ「独楽」には自決の数ヶ月前、三島を訪ねた高校生の「先生はいつ死ぬのですか」 という質問の「矢に突き刺さり、やがて傷口は化膿した」という余りに有名な記述がある。 前も書いたように私は三島フアンではないが、彼の作品では「午後の曳航」が最も印象に残っている。 さらにエッセイ「尚武の志」中の「生き長へたいというのは卑しい思想」という言葉は 沖縄の「命ど宝」と対照し、今も強いインパクトを受けている。

 居間でテレビを見ながら言うことでは無いとは言え、自爆を殉教と大儀と考える国に 赴いた3人のボランティア救済に全国祈るような今日の状況を見たら三島は何というだろうか。
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高杉良「社長の器」(講談社文庫)

2004年04月05日 | 「Weekly 読書感想」
 なにも自分が「社長の器」かどうか確かめるために紐解いたのではない。
 先頃日本電産に買収された長野の「三協精機」を、丁度10年ほど前に買収併合しようとした故高橋高見ミネベア社長と、社民党代議士実弟との確執を描いたもの。
 まだ日本に馴染のなかったTOBやM&A手法を先駆的に駆使した辣腕の経営者高橋高見は、「労働貴族」塩路自動車労連会長と共に、完膚無きまでに悪く書かれている。
 初対面がいい人ほど難しく、嫌な奴と思ったら存外善人であり、人の評価は簡単でない。ドフトスキーとまでは言わないが作家たるもの善の中に悪、悪の中の善を描いて欲しいもの。これは単に勧善懲悪調か「噂の真相」小説版。読んで気分の良いものではない。

 では「読まなければいいのに」思うが、びっくりしたことに故屋良沖縄県知事が数ページに亘って登場する。高橋実弟が経営するニッサンの下請メーカー労務部長が、屋良知事とのコネを活かして、人手不足のあの時代、沖縄から数十名の金の卵を採用し、知事と共に会社を訪れた夫人がその功績に涙する。その後の県出身の定着性は描かれていない。

 後に、この伊勢ならぬ伊波氏は、社長を政治の舞台に引っ張り出す役割も果たす。どなたか、この伊勢ならぬ伊波氏のことをご存知ないでしょうか?
 それにしても、あの佐高信が事毎にこの人の作品を推奨しているのはどうしてか。
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朝吼夕嘆

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