”朝吼夕嘆・晴走雨読”

「美ら島沖縄大使」「WeeklyBook&Reviews」「マラソン挑戦」

草柳大蔵 「実録 満鉄調査部上下」(朝日新聞)

2003年08月06日 | 「Weekly 読書感想」
 学生時代「朝日ジャーナル」を待ちかねるように読んだに連載の上製版。私の満州もの蔵書の貴重な一冊。大正リベラリズムの洗礼を受けた昭和初期の革新官僚達が日本国内の制約を避けて満州に渡り、満鉄調査部に謂集したのは有名な話。当時の満鉄調査部はさながら当時の日本のシンクタンクのハシリと言ってもいいほどで、後の日共細胞も輩出した。

 稲嶺沖縄県知事の父君である若き稲嶺一郎元参議員や俳優の森繁久弥達も希望の大陸に渡り「南満州鉄道株式会社」に就職した。「鹿児島45連隊」を退役した私の父もそれなり希望を抱き従姉の連れ合いを頼って渡満、満鉄本体は叶わず傍系の「大連都市交通社」に就職した。恐らく父は自分が就職した会社の国策親会社がこうした理念と頭脳をもっていたことは遂に理解しなかったろう。

 当時の満鉄調査部に後の第二次大戦後の占領日本でGHQの少壮革新学者が自分達の理念の実現を試みた姿が二重写しに見えた。
 本書は極めて政治経済的満州ものだが、ドキュメンタリとしては富永孝子「大連・空白の六百日―戦後」。詩情豊かな清岡卓行の「アカシヤの大連」。最近ではなかにし礼の「赤い月」か。
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正宗白鳥「作家論」(岩波文庫)

2003年08月02日 | 「Weekly 読書感想」
 明治大正の作家論として名声高い本書。先月ようやく読了。

 先の広津和郎、小島正二郎の作家論はどちらかというと人物論であるのに対し著者は漱石、荷風、藤村、二葉亭、紅葉等対象の主だった作家の作品を年代順にすべて読了し論じている。これでよく自分の作品を書く時間があったものだと驚く。
 永井荷風等はめったにコメント出来ない日本文学一方の泰斗と思っていたが、著者は平気で荷風の作品を評し荷風の感情的な反論に対し怯まず再反論するなど相当の気骨の持ち主であることを知った。

 邦人作家以外にトルストイやダンテも論じているが、とくに「神曲」には相当の薀蓄を披瀝している。「神曲」はどうしても避けて通れそうにないと改めて感じた。

 申し訳ないことに白鳥の作品はこれ以外には今後も読む機会はなさそうだ。
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朝吼夕嘆

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