強羅公園から箱根美術館

2021-11-15 00:00:27 | 美術館・博物館・工芸品
箱根登山鉄道強羅駅の南側、坂を上っていくと「強羅公園」がある。洋風の庭園である。



公園の中心にヒマラヤスギが立ち、噴水のある池がある。左右対称に花壇があってオールシーズン花が楽しめる。秋の今頃はバラが美しい。



皇室の方の名前がバラの品種名として使われている。ちょうどシーズンなのが「アイコ」。美しいピンクの大きな花である。隣に「プリンセス・マサコ」が植えられているが、花のシーズンが終わったのか、もう美しさはない。並べて植えなくてもいいのではないだろうか。



そして、公園の隣には「箱根美術館」。中世の焼物がメインの展示になっていて、備前や珠洲の力強く素朴な質感の壺が見事だ。




そして、コケのある庭と紅葉の山々といった豪華すぎる遠景が美術館の風景となっている。

遠方の地肌から煙が立ち昇っていたのが、気がかり。

ポーラ美術館は半地下

2021-11-14 00:00:41 | 美術館・博物館・工芸品
前々から、いつか行こうと思って、なかなか行けなかったのが箱根仙石原に近いポーラ美術館。印象派の巨人二人(ルノアールとモネ)の作品を中心としたコレクションと、森林の中の屋外展示、それと建物自体、景観保全のため、高さを制限して半地下にしている。



もっとも、箱根のホテルなどは景観にお構いなく7階建てとか、派手な外壁とか無秩序のようにも見える。

行く前から知っていたが、ルノアール作品の多くが、渋谷の美術館に出張中で、モネと特別展として米国の女性芸術家ロナ・ホーン展が開かれている。ルノアールは十代から二十代の頃に展覧会で見て感動していたのだが、名作すぎて数点以外は感動が薄らいでいる。



モネはいい。高知県のモネの庭園に行ったぐらいだ。言うに言われぬような温もりが感じられる。館内はノーフラッシュでの撮影も可で、といっても精密に撮影して偽造絵葉書を作成する気はないので、室内の感じだけ写してみた。

建物の半地下構造だが、瀬戸内海にある地中美術館のように、すべてが地下ということではなくいわゆる半地下構造だ。



それと、ロニ・ホーン展。アメリカ人だが旅行で行ったアイスランドに魅了され、アイスランドをテーマにした作品にこだわっている。屋内展示が中心だが、屋外にもドラム缶大の白く大きな作品が置かれている。疲れたからといって、上に腰掛けて居眠りしてみようという気になってはいけないわけだ。作品名は「風葬」。居眠りしている間に鳥に体中の肉や内臓をついばまれる可能性があるわけだ。火山の国と火山の町。

「ひとり将棋」をコケにした山本周五郎

2021-11-13 00:00:37 | しょうぎ
作家山本周五郎の出世作である『青べか物語』は全33編の短編集だが、その15番目が『もくしょう』という作品だ。作家が若い時分に、都内の喧騒から離れ浦安に在住中のできごとを基にして書いたこの短編集だが、『もくしょう』は馴染みの男女の話。

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女性の方が男に嫌われたと勘違いして別の町で結婚したもののすぐに死別。こどもを連れて戻ってくる。そして以前の勘違いに気付き、元の男に一緒に住もうと申し入れるのだが、男ははっきりした態度を示さず、毎日、将棋盤の前に座って実在しない相手とひとり将棋を指している、というなかなか割り切れないストーリーなのだが。

完全に「ひとり将棋=煮え切らない男」という公式を作っている。

ところが、プロの棋士や超強豪だけではなく、アマの勉強家でもそうだろうが、将棋の勉強と言うのは基本的には「ひとりでやる」ものだった。その後、勉強会と称して数名のグループ活動になったが、最近では「ひとり+AI」というのが基本パターンになっているようだ。


さて、10月30日出題作の解答。







今週の問題。

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わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ、正誤判定します。

港八十三番地で駿河湾を味わう

2021-11-12 00:00:58 | あじ
沼津港深海水族館に行った後、食事をどこにするか、ということをそう真剣に考える必要はない。一帯が食堂街になっている。地番からのネーミングかと思われるが『港八十三番地』という。また、道を挟んだ向かいには「沼津みなと新鮮館」という魚介類のショッピングセンターがあり、その中でも海鮮関係の食事ができる。



あまり時間の余裕がなかったこともあり、もっとも開放的な「浜焼き」の店に入る。何種類かの食材の魚介を自分で焼いて食べる店だ。



サザエ、ホタテ、牡蠣の三種は殻付きで、海老と名称不祥の深海魚の五種盛。

特に、サザエと牡蠣はよく焼いてから食べるように注意書きを渡される。生食用でないと書かれている。おそらく、何らかの健康問題が発生しても客の自業自得というか自己責任というか。したがって、適切と思われる焼き加減よりももっと焼かないといけないわけだ。



もっとも貝類は、焼き過ぎても身が固くなりすぎるだけで炭化しない限り味はそう変わらない。普段、網でサザエを焼いたりすることはないので、なかなかうまくいかない。さらに焼きたてで熱いサザエ、牡蠣の貝殻を相手に素手で格闘するわけだが、「熱いから気を付けてください」という注意書き無視する。言われなくてもわかっているだろう。

要するに、浜焼きを食べる店ではなく、魚や貝を浜で焼いて食べるという縄文時代体験型飲食店ということだろう。もっとも対価は栗の実とかウサギの肉とか釣りのエサとなる朝取りのミミズといった物々交換ではなく、紙きれやボタン型の金属で行わなければならない。

沼津港深海水族館の動物たち

2021-11-11 00:00:05 | 美術館・博物館・工芸品
箱根に宿泊して、足を三島、沼津に伸ばした今回の旅行だが、コロナ患者激減によって慌てて計画したわけじゃなく、何か月も前に予約していた。有名リゾートホテルの会員で、年間のポイントで海外のホテルに泊まれるのだが、今は各国とも鎖国状態。昨年からのポイントは今年にキャリーされたが、今年のポイントも使えないのでキャリーにすると、ポイントばかり溜まって、結局使えなくなる。そのため、国内宿泊に切り替えてポイント消化を進めることにした。

予約したのが、デルタ株全盛期だったので、必要ポイントが低く、3ヶ所に行けることを計画した。鬼怒川、箱根、それともう一カ所(まだ行っていない)。



それで、一つの目玉が、この沼津港深海水族館。駿河湾は海底が深く、深海魚の宝庫だ。深海魚を捕まえて、水槽に入れればいいということじゃない。水圧が違うのでうまく生きられない。そういう特殊技術が使われている。

実際、一大観光地になっていて駐車場もいっぱいで、やっと一カ所に車を止めることができた。ところが、有名な水族館だから大きな建物をイメージしていたが、かなり小さく見える。回転寿司店の立体看板のような感じだ。

それで、見たことがない動物が泳いでいるわけで、名前が覚えきれない。

ということで、何枚かを羅列。









そして本館のもう一つのこだわりが「シーラカンス」。



日本でシーラカンスと言えば、ここといわき市にあるアクアマリンふくしまの2ヶ所。どちらかというと学術に重きをおいたのはアクアマリンふくしまで、エンタメに力を入れたのが沼津港深海水族館のように感じた。

MISHIMA SKYWALKで大風に

2021-11-10 00:00:53 | たび
箱根強羅を拠点に3泊の旅行に。まず、遠くの三島のスカイウォークへ。三島と言っても東海道の箱根と三島の間にある。三島の方が近いが、江戸時代は、五十三次は箱根の次が三島。一生懸命歩いて関所に到着しないと、夜は追剥や天狗の世界になる。参勤交代では東海道ではなく距離の長い中山道を選ぶ大名も多かったそうで、なんとなくわかる。



SKYWALKは日本一長い吊り橋といわれ全長は400m。橋の上から富士山が見える予定だったが、急に雲が現れる。富士山だけに雲がかかっている。悪運が体の周りに付き添っていた。

時間とお金と健康を限りなく持っている人なら、楽しい遊びがいくつも体験できることになっているが、限りなく持っていない人なので、往復空中散歩のみにする。



しかし、箱根の天気は変わりやすい。いつも傘を持っていないと、雨の時、痛い目に合う。橋の途中で風が強くなり、橋全体が揺れてきた。

山中城と東海道

2021-11-09 00:00:08 | The 城
箱根と三島の中間にある山中城址に行った。第一駐車場ではなくNAVIが指示した駐車場に入ったら第二駐車場であった。そのおかげで山中城の入口まで山の中を歩くのだが、そこは東海道の旧道だった。



石が敷き詰められているが、これが逆にかなり歩きにくい。ねんざしそうだ。江戸時代は靴ではなく草鞋を履いていたはずだが、それでも歩きやすくはないだろう。



疑問を突き詰めようにも時間はない。


正規の山中城の入口の全体図をみて、その大きさに驚く。とても全部を見て回ることはできそうもなく、二の丸と本丸跡を歩くことにする。本丸の場所は、少し狭い。



もともとは、沼津や箱根は今川・北条・武田が覇を争っていた場所で、数多くの戦いが行われ、数多くの兵士が死んでいる。沼津市内には「首塚」と呼ばれる場所もある。戦没者慰霊塔だ。



城の方だが、堀は浅いがぬかるみ状になり、大軍による攻撃ではなければ持ちこたえられるはずだったのだが豊臣秀吉の小田原攻めの大群が一気に攻めを始めた。10倍以上の大軍による攻撃で4000人の北条軍は壊滅した。

信長、秀吉、家康の三人を「三雄」というそうだが、いずれも「神も仏も無視」して大虐殺コースだ。

サラ金返済,月給から先取り命令!?

2021-11-08 00:05:00 | 市民A
映画『借王』。「シャッキング」と読むらしい。高利貸しをめぐるドロドロしたシリーズだ。2000年版を観た後思い出したことがある。

少し前に中小企業の経営者だった時に、人事部あてに裁判所から郵便物がきた。案件は、社員Aがサラ金から借りている約100万円が返済されていないので、毎月の給料から一定額を会社が天引きして返済させなさいという内容だった。

ところが、Aという人物は社員にはいないわけだ。色々調べているうちにわかったのは驚愕事実。

Aは別の会社の人物だった。当社の社員と偽って、借金したわけだ。

金を貸す方もいい加減だし、もっといけないのは裁判所。調べもしないで金貸しの言いなりだ。グルだ。放置して大問題にしてから大公開して裁判所に痛い目を合わせようかと思ったが、裁判所を敵に回していいことがあるわけじゃない。

そういう名前の社員はいない、ということだけ裁判所に伝えて、これにて一件落着。

借王 The Movie 2000(2000年 映画)

2021-11-07 00:00:23 | 映画・演劇・Video
借王は「シャッキング」と読む。原作は漫画で、ドラマや映画になっている。1997年から2002年までの6年間に9本のシリーズになった。最初の3年間は年間2本、後の3年間は年間1本。2000年に公開された本作はシリーズ7作目。

要するに大阪のマチ金である。高利貸し。実際、近くの某県のドンファンも同業で、稼いで、若い奥様とお手伝いさんと一緒に豪邸に住んでいた(過去の話だが)。

登場人物は金を貸す人物群(宍戸錠などが演)と金を借りる人物群(哀川翔などが演)がいる。金を貸す方が違法な営業と脅迫的な取り立てをするので悪人で、借りる方が善人という構造になるのが不通だが、そもそも借りている方も、会社の金を使い込んだり、援助交際にのめりこんだ刑事とか碌なものではない。

で、警察が動き出したのだが、このまま一斉取り締まりに入ったりはしない。現実の世界でも高利貸しはなぜか潰れずに金利を下げたり大手銀行の傘下に入ったりしてのうのうとしている。要するにグルなのだ。

で、映画は借り込んでいる側が一芝居打って、マチ金から大金を騙し取ろうという筋立てになっている。本作では哀川翔が一人二役で銀行マンと新興マチ金経営者を演じるのだが、映画の中で違う人物二人を演じるのではなく、一人二役をやってマチ金をだます役をやるわけだ。

そういえば、サラ金絡みの事件があったことを思い出した。

黒香

2021-11-06 00:00:07 | しょうぎ
最近、ある駒を入手した。一組40枚なら良いのだが、1枚だけ。しかも香車。特徴は『黒』。



黒い木材なら黒檀と言いたいが、黒檀は水に沈むほど細胞が密で重いが、これは軽い。木材の表面だけに黒い塗料が塗られているようにも見える。サンドペーパーで擦れば、白黒つけられるが、世の中あいまいな方がいいという事象も多い。自衛隊と憲法もそうだ。憲法を守らない今のままの方が防衛力は高い。改正した憲法を守るというと、近隣の敵対国が喜ぶだけだ。

将棋年賀状の図案は黒香の詰将棋にしようかな。ミサイル型詰将棋。

かつて芹沢八段というアル中の棋士がいて、定跡が行き詰まったら「香は1回だけ一マス下がれる」とルールを変えれば、ほとんどの定跡は無効化すると言っていた。現実は、香車の動きは今まで通りでも、誰かのせいで、定跡の多くが無効化してしまった。


10月23日出題作の解答。







途中の銀捨てで、方向決定。


今週の問題。



わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見を頂ければ正誤判定します。

瓦そば

2021-11-05 00:00:44 | あじ
山口県のお土産というと、1にフグだろうか。2に獺祭かな。何番目かわからないが、?番目の『瓦そば』を頂いたのだが、言葉では知っていたが現物は初めて。かつて、「日本三大そば」というのを聞いた時、わんこそば、戸隠そば、瓦そば、と聞いて違和感はあった。ジャンルがずれているような気がした。



瓦の上で食物を焼くという風変わりな食べ方は、起原は西南戦争の時に、西郷隆盛率いる守旧派武士群が熊本城にたてこもった政府軍を包囲中に、城外で破壊した建物の瓦で食材を焼いて、美味そうに城内の籠城兵に見せたところからはじまったそうだ。

念のため補足すると、包囲した方が負け、結局は鹿児島に追いやられて全滅した。食い物の恨みも加わり厳しい結果になっただろう。ペリー来寇から始まる25年間の大政変はそこで終わった。

その瓦で焼くという調理&盛り付け一体化スタイルは、なぜか下関で復活。当所は川棚温泉だけであったのが、広く山口県内に繁殖したそうだ。あまり他県では聞かない。

最近では、瓦の上で焼くのではなく、鉄板で焼いたそばを熱した瓦にのせて食すという方法になっているそうだ。たしかに瓦を焼くのでは戦場そのもの。大火傷のリスクもある。

ところが、当家には瓦はないわけだ。屋根の上のスレート瓦は石綿が使われているかもしれない。周囲を見回すと、瓦屋根の家もある。家が留守の時に、梯子をもっていって一枚はがさせていただき、すばやくそばを食べた後、そのまま元の場所に戻せばいいかもしれないが、梯子から落ちるリスクがあるので自重する。ホットプレートを瓦に見立てることにする。



ネギ、玉子、肉。本来は紅ショウガとか海苔とかも加えるが省略。書き忘れたが、ふつうのざるそばのようにつけ汁で食べる。常識を超えているが、想像通りの味だ。焼きそば風の感じになる。やはり日本三大そばだ。

カナヘビかどうか

2021-11-04 00:00:33 | 市民A
秋の庭掃除をしようかと思っている。芝刈りとか落ち葉の片づけとか、数本の樹木の枝の剪定(整枝というのかな)。そして、庭でガサガサやっていると、あちこちでトカゲが逃げ出す。大量に居住していることはわかっているのだが、最初は嫌だったが、もはや住民登録してしまっている。ヤモリはもっと人間に親しげに近づいてくるし、知的な動きをするのだが、どちらの動物も冬眠に備えて食事に忙しい。

トカゲの話だが、目立つのは虹色のボディカラーの個体だが、関東以東に多いのはヒガシニホントカゲという種のようだ。静岡以西はニホントカゲという種が多く、普通の人にはほぼ見分けがつかないそうだ。

幼体の時はオスもメスも背中が虹色だが成体になるとオスは茶褐色になる。そうすると目立たなくなる。

一方、カナヘビというトカゲもほぼ同じよう虹色から茶褐色に変わるので、これも見分けがつかない。

つまり、庭で走り回っているのが、ヒガシニホントカゲなのかカナヘビなのか、オスかメスか、幼体か成体か。本当のところはよくわかっていない。

しかし、最近、あるトカゲ特集を読んでいてわかったのだが、成体になると、カナヘビは体がザラザラになり、ヒガシニホントカゲ(あるいはニホントカゲ)の体はツルツルのままだそうだ。

つまり、捕まえて掌の上で触ってみればいいわけだ。

そのためには二つのことが必要になる。

一つは、俊敏に逃げ回るトカゲを捕まえる技術。

もう一つは、トカゲを気持ち悪がらず、掌の上でナデナデする勇気。

どちらも、持っていない。

万博キャラクターデザイン

2021-11-03 00:00:03 | マーケティング
「2025年大阪・関西万博キャラクターデザイン」の公募が始まるという通知メールがなぜか届いた。親戚にそういう仕事をする人物がいるので、間違えたのだろうか。



まあ理由はどうあれ、日本国民あるいは日本在住の外国人の方に応募資格があるようなので、みなさんも該当サイトを探し出してから応募されたらどうだろう。ただし応募期間は11月1日から12月1日まで。

もし、応募してみようと思われたら、まず勘違いしないでいただきたいのは、「ロゴマークの募集ではなく、「キャラクターのデザイン」であること。ロゴマークはもう決まっている。

キャラクターというのは簡単にいうと「フナッシー」のようなイメージだ。ロゴマークとはまったく違うものだ。

そういえば東京五輪の時は、競技場の設計変更の次に発生したのがロゴマーク類似疑惑だった。大阪や関西に関連があるものが良いとされているそうだ。何かに関連させると、盗作疑惑が始まってしまう。

とりあえず、何も浮かばないが。

「分配なくして成長なし」は本当だろうか

2021-11-02 00:00:32 | 市民A
総選挙は自民党の勝利となり、首相が掲げた「分配なくして成長なし」の着手に入るのだろうが、果たしてこの「分配なくして成長なし」のフレーズは正しいのだろうか。

普通に考えれば、正しいわけがないわけだ。成長がなければ分配財源がないのだから、単に何らかの方法で富の移転を行うしかないが、そもそも貧乏な人がたくさんいて、超金持ちはほとんどいないのだから、超金持ちが破産するぐらい絞り上げてもあまり財源は出ない。

平等感と言っても、金持ちが貧しくなるだけで、貧しい人には恩恵がないということになるだけの気がする(中国と同じ)。

「賃上げ優遇税制」は虫がいい話で、例えば賃上げで人件費を1億円上げると、企業収益が1億円減り、支払う税金は20%として、2000万円位減る。一方、所得税はおそらく2割、地方税1割ほど上昇する。


その前に企業の収入と言っても連結海外子会社が利益を上げ、配当控除の後、親会社に送金しているということが多いのではないだろうか。


それと投票率の異常な低さだが、案外、多くの人が、貧しくても今の日本に満足しているのかもしれない。昭和30年代、40年代に市川房江という女性国会議員が、女性参政権のために戦っていたが、彼女は女性議員を多くしようとしていたわけではない。西新宿に彼女の終生をたどった資料館がある。そこにいればわかるが、彼女は女性が選挙に行くことを訴えていたわけだ。そして、現在は男女の投票率はほぼ同じであり、彼女の政治運動は成功した。現在の状況は再び、男女ともに投票率の向上策が必要ということだろう。

雪の花(吉村昭著 歴史小説)

2021-11-01 00:00:13 | 書評
吉村昭氏の著作を毎年数冊読んでいるのだが、今年はゼロ冊。どういうわけか月刊誌や季刊誌がたくさん送られてくるので、読む時間が苦しいというあり得ないことになってしまった。コロナ禍で社会との窓口をちょっとだけ広げた結果、コロナ下火状況になり追いまくられてきた。



実は、本作「雪の花」で吉村昭作読了30冊目。既読書を買ってしまうと嫌なので、今まで読んだ本をメモしてある。さらに念のため図書館で借りてくる。図書館の出口には紫外線消毒器が設置してあり1分ほど照射する。もちろん本の表紙と裏表紙が消毒されるのだろうと思っている。本の中の各ページまで消毒することも科学技術では可能だろうけど、超強力な超高周波をあてるのだろう。重力場が歪む位。

実は、この本は幕末の日本で天然痘と戦う福井藩の一介の町医師、笠原良策の人生をかけた医術の戦いがテーマになっている。

幕末、天保年間の日本は4~5年おきに天然痘の流行におそわれていた。罹れば1/3の患者は亡くなり、生き残った者は全身があばただらけになる。全身があばただらけになった者のことを、福井では「めっちゃ」と言っていた。ここ十年で常用語となった「めっちゃ」だが、語源をたどれば、福井の放送禁止用語なのかもしれない。

笠原師は海外から牛痘を取り寄せ、藩内あるいは他藩でも種痘がひろまることを目指したのだが、数多くの政治的困難と闘うことになる。しかもそこを突破しても生きた牛痘を長崎経由で福井まで運ぶ方法に苦心を重ねる。論理的には長崎で種痘を行ったこどものかさぶたを別のこどもに接種するという方法でかさぶたリレーするのだが、接種して7日で完治してしまうため、途中のリレー選手が必要。こどもを揃えるのが大仕事の上、冬の北陸路は雪深い山道だ。凍死寸前になって歩き続くことになる。以下省略。

吉村昭氏は、昭和46年に「めっちゃ医師伝」という題で笠原良策のことを書いたのだが、その後、笠原家の末裔の方が福井県立歴史博物館に多くの資料や書簡が提供されたそうだ。著者はそれらを整理し調査した結果、前書に多くの間違いや書き足らない部分があることから昭和63年に文庫されるときに、題名も変え、書き直したとのことだ。