雪の花(吉村昭著 歴史小説)

2021-11-01 00:00:13 | 書評
吉村昭氏の著作を毎年数冊読んでいるのだが、今年はゼロ冊。どういうわけか月刊誌や季刊誌がたくさん送られてくるので、読む時間が苦しいというあり得ないことになってしまった。コロナ禍で社会との窓口をちょっとだけ広げた結果、コロナ下火状況になり追いまくられてきた。



実は、本作「雪の花」で吉村昭作読了30冊目。既読書を買ってしまうと嫌なので、今まで読んだ本をメモしてある。さらに念のため図書館で借りてくる。図書館の出口には紫外線消毒器が設置してあり1分ほど照射する。もちろん本の表紙と裏表紙が消毒されるのだろうと思っている。本の中の各ページまで消毒することも科学技術では可能だろうけど、超強力な超高周波をあてるのだろう。重力場が歪む位。

実は、この本は幕末の日本で天然痘と戦う福井藩の一介の町医師、笠原良策の人生をかけた医術の戦いがテーマになっている。

幕末、天保年間の日本は4~5年おきに天然痘の流行におそわれていた。罹れば1/3の患者は亡くなり、生き残った者は全身があばただらけになる。全身があばただらけになった者のことを、福井では「めっちゃ」と言っていた。ここ十年で常用語となった「めっちゃ」だが、語源をたどれば、福井の放送禁止用語なのかもしれない。

笠原師は海外から牛痘を取り寄せ、藩内あるいは他藩でも種痘がひろまることを目指したのだが、数多くの政治的困難と闘うことになる。しかもそこを突破しても生きた牛痘を長崎経由で福井まで運ぶ方法に苦心を重ねる。論理的には長崎で種痘を行ったこどものかさぶたを別のこどもに接種するという方法でかさぶたリレーするのだが、接種して7日で完治してしまうため、途中のリレー選手が必要。こどもを揃えるのが大仕事の上、冬の北陸路は雪深い山道だ。凍死寸前になって歩き続くことになる。以下省略。

吉村昭氏は、昭和46年に「めっちゃ医師伝」という題で笠原良策のことを書いたのだが、その後、笠原家の末裔の方が福井県立歴史博物館に多くの資料や書簡が提供されたそうだ。著者はそれらを整理し調査した結果、前書に多くの間違いや書き足らない部分があることから昭和63年に文庫されるときに、題名も変え、書き直したとのことだ。

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