「食の安全」より「職の安全」が心配。特に「過去の」

2017-03-20 00:00:30 | 市民A
豊洲市場の地下水モニタリングの10回目の調査が行われ、異常値とされた9回目とほぼ同値となり、9回目が異常値ではなく正常値となった。ということは第1回から第8回が異常値ということになる。というのも、揮発性の高いベンゼンの濃度を検査するのに、採水から1日以上おいて検査をしていたということで、この検査方法自体、何らかの作為を感じてしまう。

問題は、ベンゼンとシアンということなのだが、食の安全という観点で言えば、ベンゼンは、問題ないと思われるわけだ。水1Lあたり0.1mgというのは100万分の1である。それに、ベンゼンが問題となるのは、ガスを継続的、あるいは短期でも大量に吸い込んだ場合の発ガン性(白血病)があるからで、現在のガソリンでも1%(100分の1)以下の基準だし、20年前は5%が基準だった(有害性が言われていなかった)。スタンド従業員やスタンドの隣地の住民に影響があったという事例はない。

しかし、シアン化合物の濃度もベンゼンと同濃度というのは、多すぎると言わざるを得ない。化学兵器にもなる猛毒だ。


一方、「食の安全」とは別の「職の安全」の問題だが、このような数値が出てくるということには何らかの理由があるのだろうということで、昨年10月28日の「専門家会議」に提出された資料に、ベンゼンとシアンの由来が記されているので、読んでみる。

sekitangas


昭和31年から昭和51年の20年間、石炭からガスを生成していたとしている。石炭を乾留(蒸し焼き)すると、コークス以外に水素、メタン、一酸化炭素が発生(この三種混合が都市ガスだった)し、主に硫黄を脱硫して、気体としてガスをタンクに貯めこむというのが主たる工程で、付随して各精製過程でベンゼンとシアンが発生する。それらはタールや排水として取り出し、ベンゼンは大部分が副産品となり、シアンは汚泥として外部へ搬出されている。

ベンゼンは基本的には気体であり、シアンは基本的には水溶性なので、ベンゼンが空中放出される問題がありそうだが、飛んで行ったベンゼンは地下水とは無関係であるため、土壌は汚染されない。

しかし、土壌が汚染されていたということを考えると、外には明かされていないだろう(そしてその必要もなかったのだろう)が、おそらく工場内で、ベンゼンについてはタンクの底板が腐食等の理由で欠損し、大量に漏洩したことがあるというようにも窺えるわけだ。

そしてシアンについては排水処理によって処分が行われているため、例えば大雨とか場内の配管トラブルなどで、大量漏水した可能性があるのではないかとも窺えるわけだ。そういうことは記録に残りにくい性質もあって、30年以上も経過したあとでは当事者である東京ガスでもわからないのではないだろうか。

さらに、もしそういうことであれば、盛土という対策が有効なのかという疑問がある。液体が地面に漏れた場合、とりあえず、どんどん地下に浸み込んでいくわけだ。その後、ベンゼンの場合は気体になるのだから土の隙間から地表に少しずつ蒸発する。盛土をしても、蒸発するのが遅くなるだけだ。一方、シアン化合物の場合、水溶性があるため、太陽熱によって温まり水と混ざった形で地表に向かって上昇していく。ところが水と溶けあっているだけなので最終的に水分だけが空中に飛んで、シアンだけが地表近くに残留する。砂漠の土が塩辛いのと同じ現象だ。

いずれにしても盛土は何の役にも立たない、あるいは時間稼ぎに過ぎないということが言えるのではないだろうか(政治的には2、3年問題がなければ大衆は忘れてしまうということだろうか)。

一方、築地も汚染されているとされ、実のところよくわからない。米軍のクリーニング工場だったのは、相当以前だし、使っていた溶剤も本当はよくわからない。軍の調達物資というのは、闇市的怪しさがある。いわゆるソルベント系ならほぼ無害だが、そうではないらしい。

また、某知事が言っているように「コンクリートやアスファルトで覆われているから安心」というのは大間違いで、「コンクリートなら安心だがアスファルトなら安心できない」というべきだ。アスファルトは砂利と混ぜ合わされて使うのだが、通気性、浸透性から言えばスキマだらけだ。

ここまで色々と書いてみたが、これらはもっぱら食の安全というよりも、従業者の安全という意味で問題があるわけで、最も問題は、昭和31年から昭和51年の間に豊洲の工場で働いていた方々のその後の健康ではないだろうか。特に、ベンゼンを吸い続けてきた結果、白血病に至った方がいないかの統計的データを確認しなければならないのではないかと思うのだが、おそらく企業も調べていると思うし、あまりここに批判的に書き過ぎて、ガスの供給を止められると困るので、この辺までにする。