失われた鉄道を求めて(宮脇俊三著)

2017-03-06 00:00:44 | 書評
1985年から89年の間に鉄道マニアの宮脇俊三氏が主に戦前に存在して、その後なくなった鉄道(主に私鉄)の痕跡をさがす旅に出る。同行は文春の編集部の加藤保栄氏。加藤氏は後に中村彰彦とペンネームで時代小説を書き始め、会津藩ご用達作家となる。

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では失われた鉄道とはどこかといえば、

沖縄県営鉄道、耶馬渓鉄道、歌登村営鉄道、草軽鉄道、出雲鉄道、サイパン・ティニアンの砂糖鉄道、日本硫黄沼尻鉄道

戦争で木っ端みじんになった沖縄鉄道であるが、橋台とか犬釘とかなんとか探し出すことができる。戦後の物かそれ以前の物かを見分けるには銃弾跡をみればいいらしい。隠れる場所もない平らな島を縦断して沖縄戦が行われた。

同様にサイパンでも日本の信託統治の間に砂糖産業がはじまり、完成した砂糖を船積みするための港ができ、産地から港までトロッコのようなミニ鉄道が走っていた。

その他の地区は、経済的合理性から再三立ち行かず、事業継続が困難だった。

何かエッセイストであったはずだった著者が、自らの意見や感情を封じながら第三者的に筆を走らせるのだが、その常識的な視点が少し面白くなく感じさせるのだろうか。