凶器は壊れた黒の叫び(河野裕著)

2017-03-30 00:00:28 | 書評
『いなくなれ、群青!』から始まって、本作が4作目の「階段島シリーズ」。魔女が支配する階段島を舞台とする高校生たちの愛憎がテーマであるが、なぜ高校生たちがこの島にいるのかというのは、もう一つの世界(これが普通のリアルワイルド)の自分が、魔女に会って「わたしの、こういう嫌な性格を治してください」とお願いすると、性格を治すのではなく、嫌な性格の部分だけを持った私が、この階段島に追いやられるわけだ。つまり、色々と性格の偏った人ばかりでできている島なのだ。

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元の世界に戻るためには、リアルワールドの自分が、やはり元の性格に戻りたいと思うことが必要なのだが、そういうことはほとんど起きないわけだ。そして、階段島の魔女は島内では自由に魔法を使うのだが、この魔女の座を奪おうと対抗者が現れて、島の中をめちゃめちゃにするわけだ。

という、なかなか第4作目から読むべき本ではないのだが、第一作を読みだしたらやめにくい。ただ、今回の結末を考えると、第4作で完結したのではないだろうかと思えなくもないのだが、読後、新潮社の文庫本を点検してみると、本のカバーの上についている帯の裏側に驚愕の広告があった。

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「角川文庫 河野裕 最新作 サクラダリセット2・・・・・・」

つまり新潮文庫に角川文庫の広告があるということはどういうことなのだろうか。出版社同士が談合して河野氏への原稿料引き下げでも目論んでいるのだろうか。あるいは、新潮社の「階段島」シリーズはこれで終わりなので、後は角川の「サクラダリセットシリーズ」を読んでほしいと、まさかのガソリンスタンドの閉店看板みたいな話なのだろうか。