期待される科学、期待される観光

2011-04-20 00:00:03 | 市民A
日本経団連の関連組織である(財)経済広報センターの社会公聴会員になっている。3000人ほどの会員が、定期的にアンケートに答えている。こういうのが、いわゆる世論的なものを構成していくのだろう。そして、答えたアンケートについては、定期刊行物である「ネットワーク通信」で送られてくる。春号は3月31日の発行である。つまり大震災のあと。ただし、アンケートは2月以前のもの。だから、ちょっと違和感を覚えることがある。

まず、科学技術についてのアンケートで、日本が科学技術を重視すべきかどうかという関係のいくつかの問いに関しては、おおむね80%の人が、科学技術の重要性に同意している。ただし、日本の科学技術水準が今後向上するかどうかについては、楽観論が54%、悲観論が38%といったところで、ギャップがある。悲観論の理由としては、「教育水準の低下」「こどもの理科離れ」「政府が消極的」ということ。

そして興味深いのが、今後の進歩を望む分野である。複数回答であるが%がある。



1位 医療・介護  73%
2位 生命工学   52%
3位 環境保全・リサイクル  51%
4位 再生可能エネルギー   51%
5位 農林水産   45%

そして、かなり下位の方に、原子力・核融合12%となっている。原子力は、あまり期待されていなかったようだ。

次に、将来実現を期待する科学技術だが、



 1位 電気自動車 60%
 2位 がんの転移を抑える薬 60%
 3位 変換効率の高い太陽電池 52%
 4位 iPS細胞により作成される人工臓器 49%
 5位 M6以上の地震の予測技術 38%

ちなみに、下位に高速増殖炉技術(13%)や外国語の自動翻訳機(15%)がある。

こうみると、今の日本で、安全な原発というのは、望むべきもないのかもしれない。


次のアンケート結果は、「観光」なのだが、これこそ言わずも知れるように、3.11以後様変わりである。地面に余震があるように、我々の気持ちもまだ揺れ動いていて、観光気分にはないような状況だ。さらに外国人の日本への入国も激減していて、3月11日から3月末の成田空港からの外国人入国者は前年の73%もマイナスになっているそうである。

ただ、半年から1年ほどで、人々の心も変わっていくのではないだろうかとか思っている。

まず一つは、自然を崇めるというようなムードになるのではないだろうか。人間の所業には限界があるのだが、地震と津波のパワーは、まさに、「自然と対決する」ことの愚かさを証明したようなものだ。(しかし、海辺の防波堤の上なんか歩いちゃまずいけど)


さらに、素朴に、社会や日本といったものを各自が確かめるような旅が増えていくのではないかと思うわけだ。各地に伝わる民俗とか。東北地方の森なんか、まったく神秘的な空間なわけだ。柳田国男や宮本常一の世界だ。