講演:どうなる日本の社会保障

2010-06-23 00:00:31 | 市民A
2009年11月25日に学習院大学教授の鈴木亘氏が雑誌フォーサイトの読者向け講演会で講演した内容を、欠席した私にもCDを送ってもらったわけだが、その後、フォーサイト誌は休刊し(Web版準備中?)、そのCDも聴かずに半年以上が過ぎてしまった。

suzuki

聴かなかったのは、たぶん講演の内容がおよそ予想されていて、その結末も悲観的な予想が行われるだろうということが予想されるからだ。日本の破滅シナリオだ。自分の死刑宣告を聴きたい人間は少ない。

そして、各種音源の整理のついでではあるが、ついに聴いてみると、やはり、破綻シナリオだった。

主な内容は、

1.3人の現役世代が1人の高齢者を支える日本
1970年には(65歳以上/15~64歳)の比率が1/10だったものが、今や1/3。2023年には1/2になり、2060年頃には1/1に近づくだろうと言われている(実際には、1/1だと、若者の稼ぎが全部老人にわたることになるから、本来、ありえない)。

2.人口変動が招いた格差社会
 格差社会は、小泉・竹中のせいだと思われているが、実際に格差が広がっているのは、老人の社会。もともと老人は人生の勝負けゲームの結果みたいな存在なので、元々、格差が大きいのだが、その格差が大きい世代の比率が増えたのだから、社会全体の格差が広がったことになる。
 また世代間の対立が増えていくのも、今後、2050年頃には、少子化の結果、こどもも孫もいない「おひとりさま」老人が、老人の4割を占めることになり、そうなると、年金などを払う若者たちにとって、まったくのアカの他人の為におカネを取られるような気持ちになるだろうということ。(現代の団塊世代問題より陰険な感じだ)

3.民主党の膨張予算のからくり
 社会保障費のごく一部のカットをはじめた小泉・竹中路線への反動で、膨大な予算を組み上げたものの、財源不足で実行不能になる。

4.民主党の年金改革案
 主に、厚生年金、共済年金、国民年金の1本化を図ることと、最低年金制(月7万円?)と一部所得比例(デポジット)方式の採用。そして、抜本改革は4年後ということなのだが、最低年金の所得制限がかなり高額なところになるのは、支持母体が労働貴族である「連合」であるかららしい。また、国民年金に入っていた自営業の人たちの動向も不透明である。なにしろ、4年間、議論を先送りにしたことが最悪だろう、

5.医療と介護
 どちらも、年金と同様の問題があるだろうとのこと。自由経済的市場性を無視しているために溢れる問題が処理できないということだろう。

というようなことを、アバウトではなく詳細に聴いたわけだが、日本崩壊シナリオは突然襲ってくるのだろうから、アバウトでもいいのかもしれない。

最後に、質問コーナーがあって、

A.少子化が克服できた場合、社会保障費に回せる資金が生まれるか、という質問に対して、

今、突然出生率が高くなっても、こどもが財源を払うのは20年以上先であるので、2020年頃に始める年金破綻シナリオには役に立たないだろうということ。

B.別の質問として、外国人の移民をどう考えるかということに対しては、

それ以外には手はない、ということらしいが、今後、中国も韓国も、ベトナムもそろって少子化に向かうだろうと思われているので、最後はインドから移民を受け入れるということになるのだろうが、日本人がそれに耐えられるかどうか、である。


というような講演だったのだが、やはり、ちょっと現実は、厳しいねえ。