ゴルフ場で100倍楽しんだこと

2009-02-02 00:00:05 | スポーツ
昨年末の記事だが、山梨県のゴルフ場で事故があった。

<ゴルフ場事故>ゴンドラが斜面を逆走 5人重軽傷 山梨
12月29日12時32分配信 毎日新聞

12月29日午前8時ごろ、山梨県上野原市棡原(ゆずりはら)のゴルフ場「レイク相模カントリークラブ」で、プレー客らを乗せて斜面を上っていたゴンドラが機械トラブルで下方に逆走。出発地点の車両止めに衝突し、乗っていた5人が重軽傷を負った。

県警上野原署の調べでは、乗っていたのは客4人とキャディー1人。このうち、東京都八王子市のSさん(67)と同世田谷区のTさん(68)が頭の骨を折るなどして重傷、キャディーのTさん(59)と客の男女2人が軽傷を負った。5人は一緒にコースを回っていた。

ゴンドラは定員6人。高低差がある10番ホールから11番ホールに移動する際に利用され、約30度の斜面に設置された全長約180メートルのレールの上をワイヤーでけん引する。5人も11番ホールに向かって上っていたが、到着の手前でワイヤーを巻き上げるモーターが故障した。いったんは安全装置が作動して停止したものの、直後に斜面を下り始め、出発地点付近ではかなりのスピードになったという。


このゴルフ場に行ったことはないので、この記事からのみの想像になるが、10番ホールと11番ホールが180メートル離れていて、10番ホールのグリーンから11番ホールのティーグラウンドまで、箱状のゴンドラに乗るのだろう。斜面角度が30度というのは、かなりの急坂で、三角関数で計算すると(ウソ)、高低差は90メートルになる。

ゴンドラといっても空中ではなく、レールの上をワイヤーで引っぱり上げる方式だからジェットコースター型だろうか。雨の日もあるのだから、屋根の付いた箱型をイメージする。そして、11番ホール到着寸前に、逆走を始め、距離180メートル、落下高低差90メートルを後ろ向きに爆走!!!

落下速度の計算はガリレオ先生ではないのでよくわからないが、株価と同様のフリーフォールである。重傷2名、軽傷3名は、まだしもということだろう。自動車の車体は衝突時につぶれることにより衝撃を吸収するようになっているが、ゴンドラはどうなったのだろうか。毎日新聞の記者も、折れたクラブの本数を書き加えると、事故の大きさを、より衝撃的に伝えることができたかもしれない。「4人の計56本のクラブのうち、無傷であったのは国産クラブ14本だけだった」とか。


ところで、5年ほど前になるが、ほとんど同様の事故に遭遇した。

2aca9f9d.jpg場所は富士山の見えるゴルフ場。確か、秋だった。プレーの途中から雨が降り出し、事故の時は本降りだった。

高低差が有名なコースで、キャデイさんなしのセルフプレーが基本のコースである。事故のあった18番ホール(パー5)はティーからグリーンまで50メートルの打ち上げである。4人乗りの乗用カートはコースの右端のカート道を登っていくのだが、なかなか上りがきつくショットの距離が出ない。たまたま、第二打でグリーンの近くまで届いたが、同伴の3名はスキー場のような斜面を這いずり回っていて、私は、当面、手持ち無沙汰になり、一人で乗用カートの運転席に座っていた。

ところが、グギッバシッと異音がした。

ブレーキが外れたわけだ。

タラタラッとコースの右側のカート道で逆走が始まった。カート道の右側は低いフェンスがあり、その先は崖である。まばらに樹木が生えているだけで、その下は何もない。

あわててブレーキを両足で踏んだのだが、もう加速が始まっていて、止め切れない。このまま、まっすぐ下がっていくとは思えず、いずれ、谷底落下か、カート転覆横転の下敷きという可能性が高い。

幸い、「こういう瞬時に、冷静になれるかどうかが生死の境目である」ということは、何度か経験があるので知っていた(というか、元々冷静になれるから、結果として生き残っているのかもしれないが)。

まず、谷底はお断りなので、ハンドルを切ってゲレンデ状のコース内にカートを誘導。このバックで加速中にハンドルを切るというのも勇気がいる。誤って逆に切れば、おしまい。カート道とコースの間には立ち木があったり、ブッシュがあったり。落下速度をできるだけ遅くするため、効かないブレーキを踏みながら、障害物の無い場所を選びコース内に誘導。下から見ればゲレンデ状の斜面を右上から左下に軽自動車位のカートが斜行している状態になる。

もちろん、ガリレオ先生でなくとも、まっすぐ落ちるより斜めに落ちた方が速度が遅くなるのは計算できる。そのままハンドル操作でスキーのように止めようと思ったのだが、雨で芝が濡れていて、もう自分で止めることが困難なことを悟る。斜行したところで、いずれ加速され、コース左側に激突するだろう。

ついに、海運用語でいう「アバンダン」を決意。「アバンダン=総員退船」であるが、別にカートの船長じゃないので、積荷である4人分のゴルフセットをあきらめたわけだ。

そうとなれば、加速がつくまでに脱出すべきなのだが、これが難しい。濡れた斜面で飛び降りると、カートも自分の体も制御不能になって、轢き殺される危険性が高い。ここで、思い切った大技を使うことにする。既にコースの右から中央付近まで左へ斜行したカートを、再び右向きに転回して、その瞬間に左側に飛び降りることにする。もちろん脱出に失敗したら、右側は谷底である。

転倒しない範囲でハンドルを逆に切ると今度は落下速度が速くなり、「最後の右ヒネリ」を入れると同時に車外にダイビング敢行。

ゲレンデで転んで体で滑る要領だが、あいにくビニール製のレインウェアを着用していたので、摩擦係数ゼロである。カートは最後の右ヒネリの効果か徐々に落下コースを右向きに変え、私は両手両足を大の字に開いて加速を防ぎながらも、すこしずつ左寄りにコースを変え、カートとの距離は1メートル、2メートル、3メートルと離れ、ついにフェアウェーバンカーに滑り込む。

カートの方は予想通り、コース右側の低いネットに激突。鉄製のネットは破れ、カート本体はネットを突き破った状態で宙吊りである。多くのクラブは谷底で、残ったクラブも、かなりの本数は真っ二つ。身代わりクラブだ。

雨用の帽子が奇跡的に頭に残っていたのは、落下中に無意識に腹筋を使って、頭を斜面から上げていたからだろうが、縫い目まで泥がしみこんでしまった。

同伴プレーヤーが携帯で急を知らせると、係員たちがすっ飛んできて、バンカーの中に呆然と座っていた私には目もくれず、谷底に落ちかけたカートの救出作戦を開始したのである。