いつか読書する日(映画)

2009-02-20 00:00:38 | 映画・演劇・Video
友人から、「あの映画、いいよ」と言われてからずいぶん経つのだが、忘れる寸前に思い出して、観る。

2004年の映画なので、あらすじ大公開でもいいだろうと思うので、「GOO」から拝借。

山肌に家々が貼り付いたような生まれ故郷で、牛乳配達をしている50歳の大場美奈子。独身で親兄弟もいない彼女の生活は、判で押したように単調だ。一方、美奈子の牛乳配達先の高梨家では、槐多が末期ガンの妻・容子を看病していた。実は美奈子と槐多は高校時代につきあっていたのだが、不幸な事故をきっかけに疎遠になったいきさつがある。その事を偶然知り、二人が今も想いあっていると確信した容子は、自分の死後、二人が一緒になればと願いはじめる。

田中裕子、岸辺一徳、そして女優復帰後、初の本格的な映画出演となる仁科亜季子と熟練した役者陣が織りなす、不器用すぎる大人の恋物語。主人公の美奈子は少女時代の恋を30年以上も胸に秘め、たった一人で生きてきた女。こう書くといかにもつまらなく、陰気な女と思われそうだが、毎朝ジョギングシューズで坂の多い町を走り抜ける美奈子はハッとするほど軽やかで、不思議な透明感すら湛えている。

一方、死を目前にし身勝手とも思える願望を抱く容子、長年感情を押し殺し淡々と暮らしてきた槐多にも、ふとした瞬間に垣間見せる深い魅力があり、目を離せない。監督は『独立少年合唱団』でベルリン国際映画祭新人監督賞を日本人で初めて受賞した緒方明。脚本も前作と同じ青木研次が担当している。




主演の大場美奈子(田中裕子)と高梨槐多(岸辺一徳)の長い長い長い恋愛映画であることに気付いたのは、不覚にもストーリーがかなり進んでいった頃だ。どうも、微妙な感情を理解するのが鈍い。最初は『鉄道員(ポッポや)』みたいに、牛乳配達員の苦闘数十年を描いた労働者映画かと思っていた(『鉄道員』の理解も間違いだろうが)。何しろ、舞台の長崎は、町中、坂道と階段。女優も体力だ。

GOOで書かれている『高校時代におきた不幸な事故』とは、美奈子の母親と槐多の父親の不倫関係と、その結末としての事故死。美奈子は、母親のせいで、その後の槐多の人生を歪めてしまった、との想いから、独身のまま、黙々と高梨家にも毎日、牛乳を届け続ける。



市役所職員の仕事を得た槐多は、容子と家庭を持つが、やがて容子は闘病生活の末、自らの寿命を悟ることになるが、ふとしたことから、槐多と美奈子が、長い長い長い期間をかけての恋愛感情を持ち続けている、と断定し、美奈子と対決の場面がやってくる。

そして、予想に反し、遺言のように、自分の死後、槐多と恋愛を成就するように要望&予言を行う。

そして、細かな感情の行き違いをほどいて、・・・

と、ハリウッド風ハッピーエンドで終わらないのが日本映画で、川で溺れかけた少年を助けようと、水泳の不得意な槐多は濁流に飛び込み、唐突に、長い恋は終わる。

だからといって、公僕である市役所職員の勇敢さを称える映画でないことは、鈍感な私でもわかる。

案外、「忍ぶ恋」というテーマは、万葉集から始まる日本文学の古代からの系譜ではないかと、ふと思う。


しかし、この映画を観てから、しばらく、夜、眠れない日が多い。大脳が、見逃している前半部のプロットを無意識にたぐろうとしているのか、あるいは別の理由なのか、よくわからない。まあ、脳が活動することに悪いことはないだろう。