二度目に読んだら面白かった本

2009-02-03 00:00:41 | 書評
cc45057d.jpg数日前のエントリで、本を捨てる時に、もう一度読んで、面白かったらさらにもう一回読んでも面白いだろうから、とっておこうかな、と書いたのだが、その第一号が

書斎のワンダーランド/小山慶太著(丸善ライブラリー)。

平成4年の本であるから17年前である。内容はすっかり忘れている。読みなおしても、実は、この本の内容と書名の関係がよくわからない。もしかして、本のカバーと中身が異なっているのではないかと確認したが、同じである。

内容は、一言で言うと「博物学」。ところが、現代において、博物学というのは「学問の名前としてのみ存在する学問」である。大学の学部や講座にも聞かないし、博物学者とか博物博士というのも知らない。クイズ番組の出場者なんかは、博物学系と言えるかもしれない。弊ブログにお付き合いされている読者も博物学系かもしれない。

それで、この本は、博物学の源流として、18世紀初頭のパリのサロンをあげている。革命前夜である。『百科全集』を書いたダランペールが中心である。さまざまな分野の一流人物が、サロンに集まり、ウイスキーグラスを傾けたり、世界各地から集められたコーヒーを飲んだり。

つまり、博物学というのは、さまざまな分野の秀逸な話題を専門的観点で収集し、知的満足を得るという行為なのだろう。クイズ番組をテレビで楽しむのと、かなり近い分野であり、科学技術の高度化によって、専門的知識が専門外の人に理解できなくなった現代には、おおっぴらに存在することが難しくなったのだろう。それでも、『博物学』という学問の域には達しないものの、さらにサロンに人を集めるわけでもなく、自宅の書斎の書棚の本を片っ端から調べて、知的満足(ワンダーランド)を満たすことに挑戦した「ミニ博物学」の本ということになるのだろう。

そういう本を、捨てようと思って再読したこと自体が矛盾っぽいのだが、読み直した結果、捨てないで、書棚に戻ることになった。何度読んでも面白そうだから。

巨大生物の話、科学実験の捏造の話、ニュートンのリンゴやウィリアム・テルのリンゴ、サンタクロースの実在性。歴史のIFとして、ミロのヴィーナスの腕や、夏目漱石の未完の小説「明暗」の続き・・・

最後の逸話が、キュリー夫人の不倫というのが、人間らしさの救いだろうか。

そういえば、南方熊楠という日本が誇る博物学者(本職は生物学者)がいた。研究してみようかと思いながらも、彼の世界の泥沼にはまりそうなので慎重に・・