66期順位戦(前)

2008-03-15 00:00:00 | しょうぎ
3月の将棋界は、年度の総決算である順位戦が行われる。A級からB1、B2、C1、C2の5クラスの擬似リーグ戦である。なぜ、5クラスがわかりやすい「A、B、C、D、E」でないのか、あまり説明を聞いたことがないが、たぶん、Eクラスとかいわないで、C2クラスの方が世間的には強そうに聞こえるからだろう。

3月の前半に最終局が行われ、昇級や降級によって給料や対局料やイベントギャラが変るので必死だ。

しかし、1勝の意味は3月でも9月でも同じなのだから、特に年度末だけ頑張ってもしかたないのだが、おそらく、個人事業者である棋士は最終局の頃が確定申告書を作る時期でもあり、自分の給料が安いことを数字で認識してから対局にあたるのだろうから、頭の中が「昇級=昇給」ということで一杯になるのかもしれない。

そして、A級。挑戦者は羽生二冠になった。どうも最近絶好調みたいだ。現在は王座と王将という比較的賞金が安い二つのタイトルに甘んじているが、それでいいと思っているはずはない。20年度は5冠くらいとるのではないだろうか。順位戦最終局の谷川戦では、腰掛銀に対して中住い玉という本に書いてない戦略で完勝。

一方、谷川、佐藤という元名人が陥落の危機にさらされたのだが、かろうじて両者とも3勝6敗で残留。18年度では4勝5敗で陥落した棋士もいるのだから、危機だったといえる。来期は順位7位が谷川、8位が佐藤ということになるが、過去からこの7位8位の棋士は次年度によく陥落するものだ。過去10年間のA級からの降級の記録を調べると、陥落した19人(1名は逝去)は、順位5位が1名、6位が2名、7位が3名、8位が5名、9位が4名、10位が4名ということで、8位からの陥落が多くなっている。

以前、羽生・森内・佐藤・丸山・谷川はS級と呼ばれていたのだが、そろそろ選手交替なのだろうか??

B1は記事が間に合わないので次回。

そしてB2は屋敷九段の昇格。なにしろ強いのに順位戦で上がれないという奇妙な才能を持っていた。実力と収入が最もアンマッチな棋士。1972年生まれ。1988年に四段昇格。C2組を一期で通過。棋聖三期のタイトルを獲得したのだからすぐにA級と思ったかもしれないが、なんとC1組に14期。そしてB2組の卒業まで4年。順位戦の通算成績は134勝56敗。7割0分5厘。だから今年の成績が7勝3敗でも、「いつもの調子で」ということなのだろう。果たしてこのペースでA級まで到達するのだろうか。負け越したこと一回もなしというのは記録なのかな。(後で調べると、トップ棋士では、負け越し経験なしは、森内、木村、渡辺といったところ。羽生さんは1回負越、谷川さんは今回で3度目の負越。)

C1のことだが、強い人が昇級ということだろう。また、休場中の宮田五段の扱いは、降級点0.5点扱いだそうである。だから前期の病気リタイアと合わせて、降級点1.5ということだそうだ。次回勝越すと降級点はどうなるのだろう。それよりもしばらく公式戦を指さずに、ほぼ2年ぶりに将棋を指すと、どういうことになるのだろう。強くなっているか、並みの五段に戻っているか?戦争から戻っても強かった升田幸三氏のことを思い出すのは考えすぎだろうか。


C2はやはり、10枚目くらいまで上がってから8勝2敗で昇級というようなパターンになっている。なにしろ人数が多すぎる。どうせ一回ではほぼ上がれないのだから、C3を作ったらどうだろうか。それと上のC1、B2にははっきりした定員もないのだから、昇級枠を増やした方がいいと思う。毎年奨励会から四人上がり、上に行くのが三人では一人滞留するに決まっている。

B1、奨励会、女流育成会の感想は次回(といってもノーサプライズだと、とりやめかも)。




さて、3月1日出題分の解答。

▲2八角 △同龍 ▲6五飛 △5三玉 ▲6二飛成 △4四玉 ▲4五金 △4三玉 ▲6五角 △3三玉 ▲7三龍 △2二玉 ▲2一角成 △同玉 ▲2三龍(途中図) △2二金 ▲1三桂 △1一玉 ▲1二香 △同金 ▲2一龍まで21手詰

初手▲7五角はいかにも詰みそうでも、途中で中合があって不詰。▲2八角に後手が3筋の合駒は▲同角△同香に本譜の通り進んで△4三金に取った合駒で王手をして早詰。2手目5五に合駒は▲6五飛以下早詰。2手目同龍は17手目の▲1三桂の準備である(後述)。

また、4手目△5三玉で△7四玉は▲8五金△8三玉▲6二飛成の開王手で7四に合駒要求し、それを取って早詰。

実は、当初の構想では、右下の龍や角、7六の歩もなく、右上の桂香も違った形。本譜でいえば11手目(▲7三龍)にあたる「龍引」で終わる9手詰だったのだが、それでは▲6三龍でも▲7三龍でも非限定。そのため、一旦、▲7三龍として、何か質駒を取った上、右上で仕留めることにした。そして本譜の右上の構造にしたのだが、それでは途中図での後手の2二への合駒が金でも飛でも非限定になる。そのため飛車を品切れにするために盤上に配置したいのだが、飛車に意味のある場所が見つからない。そのために、右下に龍と角を配置して、さらに7六に歩を配置。盤上の7四桂は、もともと7二とを配置していたのだが、初手に▲7五角の詰みそうで詰まない変化を作るため、香車の利きにかぶせてみた。

言い訳がましく書いたのは、初手の表面的な意味を見て、「何と大げさな捨駒だ!」とちょっと怒られそうだからである。


今週の問題は、短編。玉を追いかける!

実は、短編の製作は苦手。だいたい二つの大技が必要なのだろうけれど、まずもって「捨駒」が好きじゃない。どちらかというと駒を取って補充するようなのが好きなのだが、そうなるとどうしても長くなる。




わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と手数をいただければ、正誤判断。