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現在開催中の展覧会「茶碗の美」では、国宝の”曜変天目”以外にも、多数の唐物、高麗物、そして和物が並べられる。元々、茶碗の歴史は茶の歴史で、それは禅宗に通じるところである。日本に禅宗が伝えられたのと同時に、禅に関連する文化が中国大陸から渡来。特に緑茶文化は本家中国よりも圧倒的に日本に定着する。また多くの和菓子も、茶会に供される目的で、現在も発展を続けている。
そして、日本では、歴史を下るにしたがい、中国での茶碗のランクとは逆に、ややみかけがみすぼらしい灰被というようなシンプルスタイルの茶碗が上席とされていくのである。
が、実用の世界を離れ、美術工芸の世界となると、唐物で南宋時代に福建省で焼かれた天目地様の茶碗のランクは、曜変を最高とし、油滴、木の葉、禾目、玳皮、梅花、文字などになり、最下位が灰被とされる。
静嘉堂の曜変天目は世界に3点しかない曜変天目の中の最高の豪華さをもつといわれ、冬の夜空にきらめく一等星である。僅か高さ7.2センチ、口径12.2センチに無限の宇宙空間が詰まっている。
そして、この国宝が、この静嘉堂に安住の地(?)を得るまでには、様々な歴史の旅を経ている。
逆算すると、大正7年東京美術倶楽部で売り出された時の価格が16万8000円。現在の価格に直すと約17億円となる。これを三菱の岩崎小弥太が購入したという。江戸時代を通しての所有者は淀稲葉家である。その前が徳川家康。家康が乳母の春日の局に譲渡したといわれ、局の実家の稲葉家に引き取られる(実際は局は斉藤家の出で、稲葉家に嫁いでいたのだが、徳川家に勤めに入るにあたって、偽装離婚したといわれる)。
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ところで、世界に三品となると全部観にいきたくなるのが人情だが、とりあえず幸いなことに、すべて日本国内にある。
しかし、コトはそう簡単ではない。まず、この静嘉堂の一品は3年ぶりに期間1ヵ月半の公開である。次に、大阪の藤田美術館に二点目が所蔵されているそうだが、この美術館は春と秋の一定の期間だけ開館されることになっている。さらに、三点目は京都の大徳寺龍光院に所蔵されているのだが、この龍光院は、今のところ、一切合切、未公開ということなのである。
しかし、未公開と言われれば言われるだけ見たくなるというものである。寺が破産して、所蔵品が競売されるまで長生きするしかないのだろうか。
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