![52a98db4.jpg](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/70/f23e9f6fbb779ca339c56d12bc98d0d2.jpg)
今回の展示を見て、強く感じたのは、外国人画家の描くサーカスと日本人画家のそれが、あまりにも異なる方向であること。
外国人画家として今回大量出品しているのはルオーとシャガール。さらにマティス、ローランサン。
ルオーは特にピエロを描く。それも1930年代の「サーカスの中のピエロの存在」をとらえた一連の作品群と、1950年代の「ピエロの内面に入り込んでいった」作品群が出品されている。30年代の「組織の中の個人」から50年代の「個人の内面」への進化というのが20世紀の個人主義の発展と限界という大テーマと無関係なわけではないだろう。慾を言えば、ルオーの描く強烈な人物像は、「できれば、個室の白い壁に一枚だけにして鑑賞したい」ということなのだが、そのためのスペースとしては、この美術館の出口の方にある「ゴッホのひまわりコーナー」をつぶしてしまえばいいのだろう、が・・
シャガールの描くサーカスは、また楽しい。もともと彼の描く神秘的な世界は色彩にあふれている。実際のサーカスはどうしても原色が多くなるのだが、シャガールの色彩は、世界中の誰もまねのできないファンタスティック・カラーだ。そして、彼の作品に多数登場する、謎の馬と謎のニワトリも違和感なく感じられる。そう、サーカスはファンタジーの世界なのだ。
![52a98db4.jpg](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/4d/7033b6ee077e6df40ed05ed195d4c114.jpg)
絵画ではないが、写真家である丹野章氏の「日本のサーカス」というモノクロの連作集が20点出品されている。リアリズムという手法である。これをみると、 やはり曲馬団という気もしないではない。1956年の作。
一方、サーカスを肯定的に描いた数少ない画家の一人が川西英(1894-1965)。神戸在住の彼は、幼年の頃より、神戸を訪れる外国のサーカス団を見て、感動に浸っていたそうだ。(おそらく、海外から日本公演に来るときに、神戸か横浜港を使っていて、日本開帳公演、あるいはサヨナラ公演をしていたのだろう)彼は別名、「サーカスの川西」と言われていたそうで、その画風は明るく、色彩にあふれる。もちろん、彼が見慣れたサーカスが外国人の出演者だったからなのだろう。あるいは、彼は画家の傍らビジネスマンで大成功。幾多の会社の社長を勤めていた。日本の二元性など気付いていなかったのかもしれない。
![52a98db4.jpg](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/f1/a72fde6f01eee4ef46537743fd790a7e.jpg)
ロンドンには○○サーカスという場所があり、「サーカスとは関係ない」と日本の英語の授業では教えるが、関係あるのかもしれない。
そして、マリー・アントワネットが観たというのだが、マリーは1785年、ダイヤの首飾り事件以降、民衆の敵というレッテルを貼られ、1789年の革命時、逃亡に失敗し、捕縛される。そして1793年、殺人新兵器のギロチンの餌食となる。その後、大量殺戮の時期が終わり、1800年代のパリではサーカスが多数開催される。つまり、公開処刑の後の人民の楽しみが、サーカスに変わったということなのだろうか。フランス人がその仮説を認めるわけないだろうが。
ところで、現代のサーカスとも言えるカナダ発信の「シルク・ドゥ・ソレイユ」。”アレグリア2”を観にいったことがあるのだが、どうも現代のサーカス団に入隊するには、体操競技でオリンピック代表のレベルの腕前が必要なようだ。それでも、時々安全ネットに落下していた。ちょっと絵にならない。