ネアカなポピュリズム

2007-08-25 00:00:39 | しょうぎ
先週8月16日から19日まで、横浜上大岡の京急デパートで、京急将棋まつりが開かれた。神奈川県のアマチュア団体の一つに所属しているため、最終日の19日(日)だけ手伝いにいく。



デパートは開店10時だが、社員の出社は9時のようだ。防犯上の理由で、はっきり書けないが、ある場所に社員通用口があって、社員証を見せたり、社外の人は所定の手続きを経て店内に入る。ところが、入口から、すぐに職場である売り場にエレベーターで上がっていく人と、地下3階にあるロッカールームに向かう人と二手に分れることに気づく。たぶん、正社員はロッカールームで、派遣社員はロッカーなしで、いきなり売り場直行なのだろう。

そして、これもあまり詳しく書けないが、営業時間外のデパートは、まったく無防備だ。高額商品が、何の監視もなくショーケースの中にある。もっともデパートで、店員が万引きをしたなんて話は聞かない。捕まると、よほど酷い目に合うのだろう。開店前に掃除をしたり、ガラスを磨いたり、バックヤードに高く詰まれたダンボールの山の中の在庫を確認したり。まあ、それがデパートの毎日だ。


そして、将棋まつりの方は最終日で日曜というのに、やや盛り上がりにかける。もとの企画では、女流プロ棋士の分裂騒動で、分離独立派の中心である中井女流六段と残留派の中心である斎田倉敷藤花の公開対局が企画されていたのだが、たぶん神の声で中止になったのだろう。と、いうことでまったく華がない。しかも、横浜名人戦という優勝賞金10万円をかけてのアマトーナメントも若干参加者がさびしい。

それについて、4日連続で本大会の手伝いをされている年金受給者の方に聞いてみると、「二日目の金曜に羽生さんが来たときは、ものすごい人の入りだった」ということだそうだ。トークショー、公開対局、サイン会・・・・デパートが(実際は紀伊国屋書店)用意した羽生さんの多数の著書は次々に売り切れ。会場に人があふれたそうだ。もともと土日に来られないというので、お客様の入りを心配していたのだが、逆に土日に来られていたら、それこそパニックだったかもしれない。そして、その反動として、週末の土、日の入りが悪かったのだろう、ということらしい。

つまり、将棋連盟も羽生さん一人に頼り切っているという構造になっているのだろう。なぜ、彼に人気が集まるかといえば、対局時以外は、ごく普通の明るいキャラの人間だからだろう。確かに対局中は木村、大山、中原といった過去の実力者同様、怖い妖気が漂うのだろうが、彼ら先人が将棋以外でもカリスマ性を求めたのに対し、羽生さんは非をつけることのできない「とても良い子」である。

そして、将棋連盟とその会長がもっとも恐れているのは、「羽生さんが引退する日」なのだろうが、私見としては、その日は意外に早くくるかもしれない、と思っている。誰にも限界はあるもので、彼のように20歳からの約5年で激しく大脳を酷使した結果、最近はアベレージで勝っていても、誰も発見できないような妖手・鬼手は見ない。では、あと一年の名人位で永世名人の称号を得るのはどうするのか、と言えば、本人は、それほどこだわってはいないと思う。森内名人に先を越えられた上、これから大山、中原の記録に追いつくわけでもない。江戸の棋聖、天野宗歩も七段止まり。実力ピーク時で比べれば、羽生が史上最も強い棋士だったのは間違いない事実だ。


そして、将棋祭り最終日の方に話を進めると、中井女流六段の日になるはずだったのに、事前プログラムにない斎田さんが登場。それなら、公開対局すればいいのに、と思ったのだが、要するに残留派は別に将棋連盟でイベント(ゆかたまつり)をするので、斎田さんは、その宣伝にきたらしい。そして、プロ棋士とお客さんとの指導将棋があって、中井さんも斎田さんもお客さんと指導対局を指すことになったのだが、あやうく二人が並んでしまうところだったことに、中村修八段が気づいて、間に割り込み、席を作ってニアミス防止していた。

中井さんが人気があるのもまた、羽生さんと同じように明るいポピュリズムを持っているからなのだろう。



さて、先々週8月11日の出題作の解答。

▲4二角成 △同玉 ▲3一飛成 △5ニ玉 ▲6一龍 △4二玉 ▲3一龍 △5ニ玉 ▲4四桂 △6ニ玉 ▲5三歩成(途中図) △7ニ玉 ▲6三と △8ニ玉 ▲7三と △9三玉 ▲8三と △9四玉 ▲9一龍まで19手詰

初形から通常は、▲5三角成 △同桂と捨ててから、龍の往復運動をするのだが、この場合は、永久運動になってしまう。後手の6一の桂は逆用することになる。そして、11手目の▲5三歩成(途中図)が局面を動かす。最後は9筋まで追って、最後は▲9一龍のモノレールで詰める。

モノレール詰という見方もできるが、休戦ラインの38度線に沿って逃亡を続け、鉄条網の隙間からやっと南側に逃れたものの、はるか北方から爆撃されてしまった、という見方もできる。




今週の出題は、いやというほど平凡作。というのも手元にある「東大将棋 詰将棋道場」というソフトに自動詰将棋作成機能がついていて、それを色々と操作して作ったもの。つまり、構想段階からコンピューター任せ。何回かやってみたが、手数15手程度でさまざまな条件を変え、100題ほど自動作成させ、その中から10題程度の詰将棋的な作品を残す。そして、それを元にあれこれ改造すると、半分くらいはどうにもならないが、5題ほどは生き残る。もちろん、末尾の7手だけ残したり、場所をずらしたり、成桂を金に変えたりとか、どうしても人間が大改造させなければならない。余詰チェックももちろんだ。ただ、どうしてもランダムに作って、自己流に改造という方式だと、「テーマ作」などは作れない。結果、個性の薄い無難な作品と言えなくもない。

いつものようにわかったと思われた方は、最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。