りえ?里絵?理恵?

2006-09-08 00:00:13 | 映画・演劇・Video
数ヶ月前に、日本映画専門チャネルで「宮沢りえ特集」があり、3本まとめて録画しておいたのだが、三日がかりで見終わる。日本、台湾、香港と国際的だ。驚くことに普通に中国語で主演を張っている。彼女のキャリアの中で、外国映画に出演したのは、この2本だけだと思うが、どう考えているのだろうか。

 運転手の恋 (2000年 台湾)

 華の愛-遊園驚夢(2001年 香港) モスクワ映画祭主演女優賞

 トニー滝谷 (2004年 日本) ロカルノ映画祭審査員特別賞

0c722704.jpg「運転手の恋」は、この3本の中では、もっともオーソドックスな作りになっている。80%はコメディ。タクシー会社の跡継ぎ息子が、結婚しないと言い出し、両親が花嫁対策を始める、という筋立てで、たまたま、交通警官をしている宮沢りえを見つけて、その後、話が発展して結婚してこども数人に恵まれる、と書くと、面白くもなんともないのだが、コメディではない残りの20%が台湾社会の暗さの部分で、あとは監督と役者の力によって成り立っている。

まったく映画とは関係ないが、地球温暖化の影響で、日本の気温も徐々に高くなっていき、台湾のロードサイドのような亜熱帯風景になるだろうな、と悲しくなってしまうが、その時、台湾がどうなっているか考えると、もっと悲しくなってしまう。


0c722704.jpg「華の愛-遊園驚夢」は画質自体が夢の中のようにボーっとピンクの霞仕立てである。清朝末期の豪族階級の没落を捉えた社会派映画で、宮沢の役どころは、元高級クラブ歌手である没落豪族の第四夫人。登場人物も私立学校の女性校長(経営者)や没落豪族が手放す美術品のバイヤー。もちろん阿片廃人も多数。そして映画は、清朝大崩壊の直前で終わるのだが、その後の中国のことを考えると気が重い。

山口淑子(李香蘭)もこういう映画に多数出演していたのだろう、とは思うのだが、この二本の中国語映画出演の後は、また日本映画専門に戻っている。中国路線はやめたようだ。

0c722704.jpg「トニー滝谷」。この一風変った映画の原作は村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」の中の5番目の短編小説。たまたま1996年に刊行された初版を開くと、「トニー滝谷」は37ページ分だ。読み直して見ると、映画とほとんど同じ。確かに、一般的には、村上春樹の小説を映画化するのは、かなり難しい。超現実性(猫としゃべる人物とか羊男とか)、また、時に噴き出す俗物性(ノルウェーの森)。そういう意味で、かろうじて現実側の限界で存在できるこの短編が見つけ出されたのだろう。

イッセイ尾形が建築設計士として主演。宮沢は一人二役の助演。ブランドのドレスや靴を買い続ける妻の役と、その妻の交通事故死の心の空間を埋めるために設計士に雇われ、妻のドレスを着るように指示された妻に似た若い女性。原作ではその2番目の女は、やや計算高く打算的にあっさりと描かれているが、そこは映画と違うところ。映画では、二番目の女の方がミステリアスな存在になっている。要するに宮沢りえが登場すると、スクリーンは彼女中心に展開しはじめる。「たそがれ清兵衛」もそうだった。要は、彼女は大物風過ぎて、共演者を目立たなくしてしまうということだろう。

ところで、三作の中で、台湾映画では宮澤理恵と名乗っている。香港映画では宮澤里絵になっていた。まあ、どうでもいいのかな。


さて、この三作で注目すべきは、衣装である。「運転手の恋」では、警察の制服。「華の愛」ではチャイナドレス。トニー滝谷では、数々のブランドであるし、高校生の制服も短いシーンで見せてくれる。もちろん最近は和服の役も多い。

でも、本当は服など着ない宮沢りえの方がいい、という不純な男たちに朗報がある。あの1991年に150万冊も売ってしまった写真集「Santa Fe」が復刻されている。現在の定価は4587円になっている。掛け算すると60億円を超えるが、もっとも儲けたのは篠山紀信なのだろう。

話は、ちょっとだけ横に逸れるが、33歳のりえの妹分的な女優に、2歳年下の葉月里緒奈がいる。なんだか、優等生と奔放女というように対極的に見られていて、あまりいい役にめぐまれているとは言えないが、なんだかんだと妙な役に出ている。今度は「叫」で幽霊女の役らしい。もとはと言えば、「不夜城」に出演中、トイレのドアを開けたまま用を足すシーンを拒否して、山本未來に役を奪われたのがケチの付き始めだったはず。

彼女の方も1998年に篠山紀信の毒牙にかかってしまっている。写真集「RIONA」は、こちらも復刻されていて、定価は「Santa Fe」と同じだ。露出度も同じ位だそうだが、どちらも見てないのではっきりしない。