灘の酒蔵で酔う

2006-07-07 00:00:24 | 美術館・博物館・工芸品
大阪と神戸の間には、3本の鉄道が並行して走る。北側から、阪急、JR、阪神。この中では阪神がグレードが落ちるとされている。実際には、芦屋のあたりでは「ちょっと」違う。そしてもう少し神戸よりの灘のあたりでは、その阪神線よりさらに南の海側に酒蔵が多数ある。「灘」である。「伏見」と並ぶ酒の町。といっても、現代の灘は、タンクが立ち並んだ化学工場のような外観だ。さらに阪神大震災の時にダメージを受け、多くの設備が建て直されている。

そして、これらの工場の多くは、隣接して博物館とか資料館、記念館というような施設を持っている。そしてどこにも「利き酒コーナー」がある(運転者はNO!)。東側からいうと、浜福鶴、櫻正宗、菊正宗、白鶴酒造、瀧鯉蔵元倶楽部、泉勇之介商店、神戸酒心館、神戸甲南武庫の郷、沢の鶴、ということになる。しかし、一つずつ大きな工場であるのだから、端から端まで歩くと阪神の駅6駅分にもなる。そこまでの時間はない。南京町にも行かなければならない。

13942456.jpgそして、電車の足の便からいってJR住吉駅から六甲ライナーで数駅先の南魚崎駅で降り、菊正宗酒造記念館と白鶴酒造資料館に行った。菊正宗の方は、震災で建物が倒壊したのを鉄筋コンクリートで立て直したもの。どちらかというと、酒造りの博物館といよりも「お土産物センター」風。菊正宗の各種ブランドを買うことができる。そして、利き酒コーナーでは、しぼりたての原酒をグラス猪口に一杯だけ飲ませてもらえる。これが絶品。旨過ぎる。こんなに旨い日本酒を飲んだことがない。一気に飲むともったいないので、少しずつ啜るのだが、胃袋から血管の中に溶け込んで全身麻酔が効いてくるまで10秒くらいだ。菊正宗は辛口のはずだが、くせのないできたての原酒は甘いとか辛いとかを超越。

あまりの旨さに、今後1年は他の日本酒飲めないなあ・・といったところ。実際に1年間飲まないでいいとなると、まったく経済的だ。1年後にまた灘にくればいい。1年分の酒代より新幹線代の方が安い。

次に、白鶴酒造資料館。これもメジャーブランドだ。資料館の前の芝生がたいへんに手が入っていて、いきなりおみそれしてしまう。建物は木造。こちらは、徹底して酒造りの工程の展示にこだわる。たいへん勉強になる。酒造りは、いわゆるロット立て生産方式で、ある数量分ずつ作っていく。経験と研究の積み重ねですべてが合理的にできている。各加工段階の醗酵時間などは時間単位で決まっていて、過酷な作業が続くときがある。そして、作業場の昼食では一升瓶が飲みまわされる。体の外も中も酒浸しになっていたのだろう。資料館としては菊正宗より白鶴が上質である。

13942456.jpgそして、こちらも利き酒コーナー。白鶴の原酒もうまいが、ちょっと酒のくさみがある。利き酒は菊正宗の勝か。ただし白鶴も十分にうまい。あと半年は他の酒が飲めないくらいだ。

そして、灘にはこの2社以外にも多くの利き酒コーナーがある。クルマだと飲めないが、歩いて飲みまわると、とても遠い、という攻略の難しさがある。そして、一杯ずつ飲んでいっても結構大量に飲むことになる。そして阪神電車は車両がちょっとボロイ。ふわふわの座席シートは冬場に暖房が入ると、眠り込むこと間違いなしだろう。特に利き酒の後は要注意である。山陽電鉄に乗り入れて、姫路まで寝過ごしてしまうだろう。