正月の酒

2006-01-04 21:37:28 | マーケティング

9da04d1f.jpgもうすぐ正月も終わり、初仕事になる。

昨年12月19日号「1月4日の初仕事?」で細かく書いた改正独禁法の適用が1月4日から始まる。内容は前エントリと重なるので触れないが、キモは、

1.カルテル(談合)の共謀者の一社が自首すると、最初の一社は課徴金がゼロになる。  さらに、法律上無罪にはならないのだが、閣議決定で、最初の一社は不起訴となる。  (同日の自首の場合、FAX、e-mailでの受付順に一社目を決める)

2.時効は3年で、平成15年1月4日以降の事案が対象になる。ここで気になるのは、1月4日0時0分0秒を狙って自首文書を公取FAXに送付予約した人なのだが、1秒前に公取に到達すると、単なる旧法での自首になってしまい、有罪になる。例の世界標準時12月31日24時に「うるう秒」が1秒あったため、深く計算しすぎて、誤る社がなければいいのだが・・

実は、12月の初めに、独禁法のレクチャーのため、倉敷にある会社を訪問した時のことだが(もう独禁法とは関係ない話)、東京に戻る前に、地元の酒の話を聞いた。なにしろ倉敷は酒造りでも有名な場所。正月用に買って帰ろうと思ったわけだ。ただし、難しいのは、話を聞きすぎると、「ではお土産に」とかなってしまうと、出張の目的からいって後で具合が悪いことになるかもしれない。情報を聞くだけにする。もう一つ、聞く相手が、単に倉敷にいるサラリーマンというだけで、酒のことに詳しいかどうか、一抹以上の不安がある。

そして、「正義桜」か宮下酒造の「荒走り(あらばしり)」がいい、と聞く。「正義桜」というウヨ的名称の酒のことは知っている。倉敷駅前の酒屋に大きな看板が出ている。そこで買えばいいのだ。宮下酒造のことはよく知らない。そして、実際には時間がタイトで倉敷駅前で買い物をする間もなく岡山空港へ駆け込む。岡山空港では何種類かの地酒が売られているが、残念ながら正義桜はない。一方、宮下酒造の「荒走り」があったので4合ビンを買う。

そして、そのまま元旦の夜を迎えたわけだ。そして、一見、信楽風のお猪口に常温で酒を注ぎ、口を漱ぐと、これがきわめて日本酒の味なのだ。例の越の寒梅とか八海山といったスッキリ系とは対極。なかなか飲めない。悪酔いするだろうとの確信があって、僅かな回数だけの杯となる。そして正月二日も、ワインとチューハイの後、また少しだけ、という具合だ。

ところで、日本酒通の方は、すでに気付いていると思うが、この「荒走り」というのは、ブランド名ではなく、「新酒(ヌーボー)」を意味する一般的なことばなのだが、それを知ったのは宮下酒造のホームページを熟読した結果である。どうみてもブランド名のように思える場所に表示されている。では、ヌーボーでなく1年ねた後はどうなるかと言うと、小さな字で書いてあるのだが「極聖(きわみひじり)」という1升1万円の高級酒になるように書かれている。しかし、それは良く考えるとおかしい。使用するコメも「極聖」は”山田錦”であるし、「荒走り」は”あけぼの”である。精米率も極聖は40%、荒走りは60%。

まあ、ボジョレヌーボーのようなものなのだろう。荒走りは直ぐに飲めということか・・そう思えば、この荒々しい味はボジョレヌーボーに通じるところも感じる。そして、さらにこの酒を教えてくれた人が「単なるサラリーマン」であったことを思い知らされたのは、「宮下酒造」が岡山県にはあるものの、倉敷にあるわけではないし、さらに「正義桜酒造」も同様に倉敷に社があるわけではないことを知った時なのである。