博士の愛した数式は、1-1=0

2005-12-22 22:35:02 | 書評

eb397a17.jpg生真面目な女流作家、小川洋子が「博士の愛した数式」という小説を書いて、第一回本屋大賞を受賞していたことは知っていたが、「本屋大賞」というのは画期的だな、と思う反面、本が好きな本屋がいるのだろうかという違和感をもっていた。

実は、今から16年前の1989年のことだが、ある企画の一環で横浜某所に本屋を作ることになり、責任者をやっていた。当時の経験から言うと、本屋は本を商品としてしか見ない人がほとんどで、「千円札の数百倍の重さの紙の塊を千円で売って、150円しか儲からない。」という肉体労働者と化してした。当時は文芸本は両村上&ばななだけが売れる状態で、取次からの配本を増やすために、書店員一同で「ノルウェーの森・上下」の架空の客注票を書いていた記憶がある。本など読んでいる書店経営者など一人も知らなかったのだが、中小書店の淘汰が進んで、残存者利得で経営に余裕ができたのだろうか。

そして、にわかにあわただしくなったのは、映画化されることになったからだ。2006年正月後半に上映開始。2003年8月28日の初版なので、色々ばたばたと話が進む。原作は文庫化され、再度、販売ドライブがかかる。

粗筋をザクっと書くと、登場人物は、数学博士、家政婦、その男の子「ルート」。ほぼ3人。数学博士は17年前の交通事故の結果、事故以降の記憶は80分しか持たない。身の回りの世話をするために派遣された家政婦が、博士の80分間数学教室の生徒になり、そこに男の子のルートがからむ。数学博士といっても、登場するのは、「数字そのものの特性の話」。そして、なぜか阪神タイガースの背番号28の男「江夏豊」がキーポイントになる。村上ファンドの先取りがこの小説にあったわけだ。

そして、この本をエンタメとして捉えるなら、「好きか嫌いか」の二元論かもしれない。私自身、それほど数字に弱いほうではないが、ちょっと疲れてくることもある。長さにおいても限界かな。そして、3人の友情は、地方球場で観戦する阪神-広島戦で、飛んできたファウルボールの盾に博士がなることで最高の場面を迎えるのだが、このあたりまで読んできた読者は、この小説のエンディングが、ハッピーに向かうのかアンハッピーに向かうのか気になりはじめる。

そして、その答えは、ただちに本屋に行って購入するか、1月後半以降に映画館に行けばわかると書ければいいのだが、映画のキャストを見て、気になることがある。

 寺尾聡 博士役
 深津絵里 家政婦役
 斎藤隆成 ルート(こども時代)
 吉岡秀隆 ルート(成人)

何が気になるって、原作に登場するルートは、こどもの時だけなのだ。成人のルートは最後の最後、22歳の青年として一瞬だけ登場。小説の中では1992年に11歳なので、計算すると、この小説が発表になった2003年に22歳だ。いったい吉岡秀隆は???

さっそく、1月20日に開かれる試写会に行けるよう、ある筋で応募したので、本ブログ読者の方は、運がよければ、映画館に行く前に粗筋を全部知ることができる。


ところで、このblogのURLはhttp://blog.livedoor.jp/ota416/となっているが、「おおた葉一郎」を「ota416」と捻っているのだが、この416という数字を博士流に因数分解してみる。

まず、2で割ると208、さらに2で割ると104、さらに2で割ると52、さらに2で割ると26、さらに2で割ると13という不吉な素数になる。2の5乗×13。

不運な男には隠れた要因があったわけだ。

追記1:吉岡秀隆、内田有紀離婚・・(1+1)÷2=1
追記2:もう一つの数学者の映画、「プルーフ・オブ・ラブ」1月14日ロードショー。


5泊6日の城めぐりplan(3)

2005-12-22 22:34:09 | The 城

3日目
1cc075ae.gif福井駅前から、本丸岡行きのバスに乗る。8時12分発。途方もないボロバスがスピードをあげて走る。国境封鎖に間に合わなくなるかのような暴走をする。席から落ちそうになる。何か城廻そのものが虚しくなるような感じになる。我慢だ。8時48分着。

終点のあたりが複雑だが、わかり易く本丸岡で降りた方が無難だ。が、終点には何もないし、城の表示もない。どっちかと言うと見捨てられた可哀想な城だ。手当たりしだいに数少ない歩行者をつかまえて、道を聞き、その道をしっかりと覚えておかなければならない。帰りも同じだからだ。そして広い城内は面影もなく、天守閣を残し、残り大部分は無秩序に住宅地になってしまった。

そして、天守閣はめずらしく板壁である。さらに福井地震で倒壊したのだが、大部分の建材を再利用して復元されたので、「現存ではない」という声もあるのだが、そこまで厳密にいわなくてもいいのではないかとも思う。

この丸岡城は柴田勝豊が築いたのだが、工事が進まず、人柱が必要ということになったそうだ。そこで「お静」という百姓の女性が、自分の男の子二人のうち一人でも、侍に取り立ててくれるならという条件付きで応募したというのだ。そして、無事に城が完成したのだが、肝心の勝豊は、別の城に行ってしまって、その約束が反古になったといわれる。そのため、現地では、4月頃しとしとと降る雨のことを、「お静の涙雨」と呼んでいるそうだ。真偽不明なので感想は差し控える。

そして、天守閣の下には丸岡市の博物館があり、さらに公園もあるのだが、そこに足を踏み入れると道に迷うことになる。丸岡城はもともと将棋の駒のような五角形の地割りになっていたため、現在でも道が不規則だ。そして、道を聞こうにも歩行者はめったにいないし、商店もない。車は突っ走っている。迷子に注意だ。(五角形といえば宇和島城にも見られるが、相関があるのかどうかは今のところ不明)

10時16分本丸岡発福井駅行きの京福バスに乗る。再びシートにしがみつかなければならない。バスの運転手には話し好きがいて、乗客と雑談したりしている。10時54分福井駅着。そして、再び北陸線に乗る。11時14分発特急しらさぎ6号。長浜駅12時12分着。4分後に新快速に乗り米原の一つ先、彦根駅着。12時30分。

1cc075ae.gif彦根城は駅から歩きだ。ほぼ平地である。時に大雪に見舞われる。それでも歩ける。石段を一歩ずつ登るのが苦心惨澹になるかもしれないが、天守閣は美しい。ただし、残念ながら、小振りである。外から鑑賞するのがお似合いなのかもしれない。庭園も美しいが、雪が降ると事実上入園困難となる。そして、幕府を強く支えてきた井伊家の趣味は高尚であり、彦根城博物館は、まさにお宝の宝庫である。時間があればじっくり一日かけて見ても構わない。12城の中では、大きなハイライトの一つである。

しかし、残念ながら先を急がねばならない。再び、彦根駅へ徒歩で戻り、新快速で西へ向かう。14時30分発、京都駅着15時16分。そして、新幹線に乗り、岡山に向かう。京都発のぞみ55号。岡山着16時37分。途中、姫路で降りて姫路城に向かいたいところだが、既に閉館時間になっているので、パス。岡山では初めての夜のフリータイムができるが、そろそろ、体のマッサージでもしたほうがいいだろう。ちょうど旅も半分。

1cc075ae.gif3日目移動距離は417km、乗車時間は4時間14分。
続く