「からくさ」の父&娘

2005-12-17 22:26:55 | 書評

2b9c7e8b.jpgテレビ東京で放送されている「開運!なんでも鑑定団」は好きな番組の一つだ。司会は石坂浩司と島田紳介。鑑定を依頼された「おたから」を鑑定士たちが真贋を見極め、評価額を発表する。本人査定額との落差にスリルがある。だいたい10に1つが大当たりになり、残りはガッカリということになる。12月13日放送では、ある住職が持ち込んだ中国の作家、魯迅の書に、7,000,000円がついた。

そして、その鑑定団たちのリーダー格が「中島誠之助」である。昭和13年生まれ。骨董屋「からくさ」店主。骨董通りの命名者。日本の伊万里の値はこの人が付ける、ともいわれる。有名な決めセリフは、「いい仕事してますねえ」だ。なかなか、便利なコトバだが、常人が使うとうまくいかない。どこか嫌味に聞こえてしまう。

2b9c7e8b.jpgところで、この誠之助さんの長女が中島由美さん。芸大大学院修了後、戸栗美術館学芸員を経て、現在は日本陶磁器協会勤務。いくつかのカルチュアセンター講師としても活躍中。「古伊万里からくさ美術館」は父誠之助コレクションを紹介、解説した本。要するに、誠之助氏が仕入れた骨董のうち、あまり高額でなく、お気に入りは売り物にはせず、自分でコレクトしてきたものが多数あるわけだ。この本を読む限り、柿右衛門はじめとする色絵はお気に召さないようだ。価格が高くコレクトするのは経営的に損ということかもしれないが、白地に藍の染付けだけのシンプルカラーがお好みのようだ。

というのも、この本でも勧められているのだが、実際に食器として使うことにより、陶磁器はより活きてくるということらしい。白地に藍の文様ならば、和食、洋食どちらもお似合いだ。困ったことにこの本を読んでいくと、伊万里が欲しくなってくる。彼女に言わせると、骨董の中では伊万里は安い、と断言しているのだが・・・(安い高いは相対的問題なので)

2b9c7e8b.jpgそして、この本のちょっと面白いところは、骨董屋「からくさ」がまだ無名だった頃の話。何しろ、時々、大量に陶磁器が入ることがあったらしい。そうなると、その日は早めに風呂に入らないといけなかったそうだ。そういう古い陶磁器は、自宅の浴室で、浴槽の中に沈められるそうだ。そして、まずきれいにみがかれる。さらに、次は浴槽の中で漂白されるそうだ。その間2、3日は風呂には入れない日が続くそうだ。(たぶん、今は違うのだろう。いいギャラもらってますねえ、だ。)

しかし、白地に網目文様の藍染の大皿でとらふぐの刺身をつまむなど、やってみたい遊びの一つだが、簡単ではない。ふぐの方は金次第だろうが、網目文様の大皿は、めったに手に入らない。ますます、ほしくなる。