工作船といっても図工の宿題ではなし

2005-12-09 21:58:42 | 市民A
b5649c9c.jpg横浜シリーズは、「ワイン利き酒会」「赤い靴号バス」「トリエンナーレ2005」に続き、きょうが最終回。赤レンガ倉庫に近い岸壁の一角に、いかにも大急ぎで組み立てたような建物がある。海上保安庁が日本南西部の海底から引揚げ、当初はお台場の「船の科学館」の一角に無料展示していたのだが、無料展示の分だけ見て帰る人ばかりで、船の科学館の経営が立ち行かなくなるから、と笹川先生からのクレームがあったからかどうか知らないが、その後、”ついの住処”として、横浜が選ばれたわけだ。まあ、市民にとって、あまり似合わないプレゼントではあるけど・・

お台場にあった時には、”ゆりかもめ”の中から遠目に見ていた関係で、小さく感じていたが、船を建物に入れると、ずいぶん大きく見える。全長50メートルくらいに見えたが、数値を読むと、全長30メートル。大型家具店で家具を買って、自宅に届くとその巨大さにあたふたとする図を、配送担当者に見破られるのと似ている。

b5649c9c.jpgまず、建物の中に入ると、いきなり船首側がこちらを向いている。そして、かなりいくつもの銃撃による穴が開いているのだが、銃撃戦だから当然かもしれない、とか思ってよく見ると鉄板の破口が外向きに開いているではないか・・外から撃たれた場合は、内側にめくれるだろうから、これは、中からの射撃のあとだ。船底の方にこもって、近づく敵(日本国海上保安官)に対して撃ちまくったのだろう。船に穴があけば沈むことぐらいわかっているだろうから、かなり自爆直前の終局場面だろう。実際、約10人乗っていたらしいが、重要な機密書類を逃走中に海上投棄していたのが撮影されている。結局、周りを包囲され、この船は船底から爆発し、自沈。発見された遺体は、完全なものが4体。二つの頭部を含むバラバラになった体の一部がいくつか。4人以上は未発見。バラバラになった二人が起爆させたのだろう。

b5649c9c.jpgそして、この工作船は、船尾部から別の小船を海上に排出することができる。かなり小型の白っぽい漁船風(あるいは遊漁船のような大きさ)。おそらく、この中国漁船風の工作船で日本沿海に近づき、上陸するためには一回り小さい船に乗り換え、海岸線から100メートル付近まで接近し、あとは泳ぐとかゴムボートとか使っていたのだろう。その小船も撮影は可能だが、拉致された人たちのことなど思い起こすと、無念さが沸いてきてシャッターを押せない。


実は、先日、ある海上の国家施設を視察するため、モーターボートに乗ったのだが(乗りたくなかったのだが、そういうハメに陥った)。30ノット(時速56キロ)という高速船だった。ものすごく怖い。船体にしがみつかなければならないが、プラスティックの船体は縦や横に揺れ続けるし、時々大波をジャンプして宙に浮く。さらに、万一海に落ちたら、すぐにライフジャケットの紐を引いて空気を入れなければ沈んでしまうので、紐もつかんでいなければならないし、若干の手荷物もあるし、こごえるような寒さの中で顔面にふりかかる海水の泡沫も払わなければならないが、すべてを合わせても、手は二本しかない。何がいいたいかというと、30ノットというのは、海上では相当の高速ということだ。

そして、この高速船、エンジンは1000馬力が4台。最高速度は33ノット(時速61キロ)、プロペラ(スクリュー)が4基横並びとなっているのだが、見つかって逃走しているときの速度は8ノット程度だったらしい。エンジンのうち3台が故障していたらしい。裏返していえば、そんな故障船を捕まえるだけでも、この始末なのだから、思いやられる。

b5649c9c.jpgそして、何の目的で日本に接近していたのかは、はっきりとはしないが、武器が多数用意されていた。その武器類は、展示されているが、10人ほどの船員にしては、多すぎるとしか言えない。戦争状態の時には十分に戦闘能力があるということではないだろうか。ロケット砲まである。例えば、この船一隻で地方都市の港(例えば新潟港)とかを攻撃されて、防衛できるのかな?とか思ってしまう。別の意味で武器マニアにはこたえられないかもしれない。全部本物だ。

そして、建物の外に出ると、そこは午後の陽光のあふれる平和都市横浜である。ここが正しい展示場所かどうかはよくわからないが、やや恒久的な建物に収まることになったこの危険な物体。その不要となる日はどのようにしてくるのだろうかといくら想像してみても、確たるシチュエーションは思い浮かばないのである。