三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

紀州鉱山への朝鮮人強制連行 1

2011年09月20日 | 紀州鉱山
 このブログの9月16日の「課税に抗議する第2回裁判10」でお伝えしましたが、紀州鉱山の真実を明らかにする会は、熊野市にたいする「準備書面2」および「証拠説明書」と三重県にたいする「準備書面2」および「証拠説明書」を、9月16日に裁判所にだしました。
 「準備書面2」とは別個に、紀州鉱山の真実を明らかにする会は、紀州鉱山への朝鮮人強制連行にかんする被告熊野市の「答弁」にたいする全面的反論を「準備書面3」でおこない、第2回裁判の当日(9月29日)に裁判所にだします。
 きょうから6回にわけて、「準備書面3 紀州鉱山への朝鮮人強制連行」の要旨を連載します。
 熊野市を被告とする裁判は9月29日(木曜日)午前11時から、三重県を被告とする裁判は午前11時半から津地方裁判所302号法廷で開かれます。傍聴に来てください。
                                        佐藤正人

■紀州鉱山への朝鮮人強制連行
 第1 被告熊野市の「論述」の「前提」と乙第1号証の問題

 被告熊野市は、原告の訴状にたいする「答弁書」で、
    「原告らが用いる「強制連行」という用語の定義は不明である。
     それで,「徴用」と同義で用いられるものと理解して,以下では,その前提で論述する」
としている(被告「答弁書」8頁2行~4行)。
 この被告熊野市の前提は誤りであり、その誤りを前提とした被告熊野市の「論述」は、事実とかけ離れているだけでなく非論理的である。
 原告は、被告熊野市に、このような非歴史的非論理的な「論述」の撤回を求めるとともに、被告熊野市が、紀州鉱山への朝鮮人強制連行という客観的歴史事実を認識する努力を真剣におこない、原告の提訴に応えることを求める。

 被告熊野市は、日本が朝鮮を植民地としていた時代における日本への朝鮮人強制連行の歴史を実証的になんら学ぼうとしないで、「原告らが用いる「強制連行」という用語の定義は不明である」と述べている。
 強制連行とは、本人やその家族の意思に基づかず、他からの強制によって連行することである。国民国家日本は、植民地としていた朝鮮から多くの人たちを強制連行した。強制連行は、「「徴用」と同義で用いられるもの」ではない。
 被告熊野市は、強制連行と徴用を「同義」とするという誤謬を前提として、「国民徴用令」に言及し、
    「国民徴用令は「内地」にいた日本国民には既に1939年(原文元号)7月に実施されていたが、朝鮮への適用はさしひかえようやく1944年(原文元号)9月に実施されたもので,朝鮮人に対する徴用が導入されたのは翌年3月の下関~釜山間の運航が止るまでのわずか7ヶ月間であったことは,1947年(原文元号)7月13日付け朝日新聞(乙1)の報道の通りであった」
とのべている(被告「答弁書」8頁23行~9頁2行)。
 このとき被告熊野市が、乙第1号証として、1947年(原文元号)7月13日と手書きで書き込んで「答弁書」に添付した『朝日新聞』の記事のコピーの日付があやまりであり、正しくは1959年7月13日であったことは、原告が「準備書面2」でのべた通りである。
 原告は、被告熊野市が、1944年9月から7か月間の歴史事実の証拠として、その約15年後の新聞記事を唯一の証拠として示す被告熊野市の方法が、歴史認識・歴史叙述の方法として極めて悪質であることを強調しておく。
 歴史事実を述べるとき、その証拠として示す文書・映像等の記録は、できるだけ第1次資料であることが望ましい。他に資料がない場合はやむをえないが、新聞記事を証拠とするまえに、1次資料を探索するのが当然である。
 被告熊野市が「答弁書」に乙第1号証として添付した『朝日新聞』記事の見出しは「大半、自由意志で居住 外務省、在日朝鮮人で発表 戦時徴用は245人」であり、その冒頭には、
    「在日朝鮮人の北朝鮮帰還をめぐって韓国側などで「在日朝鮮人の大半は戦時中に日本政府が強制労働をさせるためにつれてきたもので、いまでは不要になったため送還するのだ」との趣旨の中傷を行なっているのに対し、外務省はこのほど「在日朝鮮人の引揚に関するいきさつ」について発表した」
と書かれている。
 被告熊野市は、「答弁書」の記述の証拠文書として提出するなら、朝日新聞の記事ではなく、その記事の情報源である外務省の文書を探索すべきであった。そのような最低限の作業をするなら、その過程で被告熊野市は、1947年(原文元号)7月13日という書きこみが偽りであることも自覚できただろう。
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