樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

餌付け撮影

2015年03月12日 | 野鳥
大阪郊外の都市公園へ鳥の観察&撮影に出かけました。
目当ての一つはミヤマホオジロでしたが、そのポイントには数人のフォトグラファーがいて餌を撒いていました。餌付け撮影はしたくないので、その場を退去しました。別の場所ではミルワームを撒いてルリビタキを撮影していたので、諦めて通り過ぎました。
この公園には大きな池があって、毎冬50羽ほどのオシドリが滞在します。池の周囲のドングリを食べるようですが、それだけでは足りないので、管理事務所の方が園内のドングリを拾い集めてオシドリに与えています。これも餌付けですが、抵抗なく撮影しました。



佐渡のトキは国家的な餌付けプロジェクトですし、北海道ではタンチョウに、東北地方ではハクチョウに餌を与えていますが、それらは保護のためですから否定しません。
また、NHKやBBCの野鳥番組には餌付け撮影としか思えないシーンがありますが、教育的意義があるので否定しません。
さらに、朝の散歩でヤマガラにヒマワリの種をやるのを楽しみにしている人がいますし、庭に餌台を置いて野鳥を観察する人もいます。私自身もやっていたくらいですから、これも否定しません。
しかし、撮影するために餌付けするのはマナー違反だと思います。鳥の野性を損なうのはもちろん、ヤラセ写真は人を欺くからです。餌付けを隠してブログに掲載したり人に見せれば、「自然に撮った野鳥の写真」と思って見る人をだますことになります。そして、自分自身も裏切ることになります。
不愉快なので別の場所に移動してベンチに座っていると、目の前の葦原からヒクイナが出てきました。餌付けする人もフォトグラファーもいません。独り占めで、気分よく、じっくり眺めたり撮ったりできました。



野鳥写真家の真木広造さんはご自身のホームページで餌付け撮影を擁護されています。その中で、「現在の法廷での餌付けについての判定では違法性はなし、餌付けを批判中傷した側に名誉毀損の違法性があり、慰謝料支払い命令の判決が下った判例があります。これが餌付けについての公式な判定です」と書いておられます。
餌付け撮影は法律の問題ではなく倫理の問題なので論点が違うと思いますが、図鑑『日本の野鳥650』の著者である真木さんが餌付け撮影されることは否定しません。NHKやBBCと同じく教育的意義があるからです。まれにしか現れない鳥を図鑑用に撮影するために、ご自身がおっしゃる「高度な餌付け技術」を駆使されることはあるでしょう。
しかし、一般のフォトグラファーが「こんな鳥を撮った」と自慢するために餌付けするのは、鳥と人を裏切る行為だと思います。
ヒクイナを見ていたら、同じ葦原からクイナも出てきました。



頭では餌付け撮影のことを考えながら、目はクイナとヒクイナを追いかけていました。
コメント (4)
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