樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

秋沙

2013年01月10日 | 野鳥
前回の記事のとおり、クロジとビンズイに「ホモ・ルーデンス」を自覚させられたので、正月休みの元旦から6日まで、ほぼ毎日鳥と遊び呆けておりました。地元のフィールドはもちろん大阪や兵庫まで足を伸ばして、いろんな鳥を見てきました。
宇治川では上流でも中流でもカワアイサが浮かんだり潜ったりしていました。



冬鳥なので春になると北へ帰るのですが、昨年は数羽がそのまま居ついて夏を過ごしました。今年も帰らないのかな。
同じアイサの仲間、ミコアイサは近ごろ京都府南部では見られないので、兵庫県まで行ってきました。別名「パンダガモ」。



この2種はカモ科ですが、「アイサ」と呼ばれます。ウミアイサ、コウライアイサという仲間もいます。
なぜ「アイサ」なのか気になったので調べてみると、漢字では「秋沙」と表記し、昔は「あきさ」と呼んでいたものが「あいさ」に転化したようです。
秋が去ってから訪れるからとか、繁殖地では秋に去るからとかいろんな説がありますが、語源探索は所詮想像の域を出ないので確証は得られません。ただ、『万葉集』に以下の歌が残っています。
山の際(は)に 渡る秋沙(あきさ)の ゆきて居む その川の瀬に 波立つなゆめ
「山を越えて渡ってきたアイサのために、川よ決して波立たないでおくれ」という意味だそうです。
男女の愛情をアイサに託して歌ったのかなと思いましたが、冒頭に「鳥を詠む」と題されているので、単純に渡り鳥を題材にした歌のようです。だとすると、鳥に対する万葉人ならでは優しい気持ちが表れていますね。
「川」とあるので多分カワアイサのことでしょうが、はるばる渡ってきた水鳥に対するこの気遣い…。「鳥を見たい」とか「動画を撮りたい」といった我欲で遊び呆けている誰かとは、鳥に対するまなざしがちがいます。反省!
コメント (4)
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