5月10日からバードウィークが始まったので、野鳥保護のお話です。
福島の原発事故以降、原子力に代わるエネルギーとして風力が注目されています。「風で発電できれば安心だし、CO2も出ないし…」というのが一般的な受け止め方でしょう。
しかし、風力発電にはあまり知られていない欠点があります。その一つがバードストライク。風車に野鳥が衝突したり、翼を切断されて死亡する事故が頻発しているのです。
日本にはまとまったデータがないようですが、米国カリフォルニア州のエネルギー委員会は同州の風力発電地帯で調査し、1年間にイヌワシが76~117羽、猛禽類全体で881~1300羽、鳥類全体で1767~4721羽、さらに全米では3万5千羽がバードストライクで死亡していると発表しています。
(画像提供:morgue File)
猛禽類が犠牲になりやすいのは体が大きいからでしょうか。また、渡り鳥のルート上に風車が並んでいると事故も増えるようです。
バードストライクを回避するために、欧米では野鳥を含む環境への影響評価を取り入れて設置場所を決めているそうです。また、『不都合な真実』でノーベル賞を受賞したアル・ゴアが次に出版した『私たちの選択』によると、センサーによって鳥の衝突を避ける風力発電も開発されつつあるようです。
日本のバードストライクで最も死亡事例が多いオジロワシ
(An wild white tailed eagle by Surub)
しかし、バードストライク以外にも低周波の音による地域住民への健康被害、景観の破壊、設置のための環境破壊、低劣な発電効率、メンテナンス上の問題など風力発電は多くの課題を抱えています。デンマークは表向きは風力発電の国として知られていますが、その裏ではスウェーデンの原発から電力を輸入しているといいます。
「原発は危険だから風力発電を」とか「風力発電は環境にいい」と単純に考えたり、世間の風潮に流されるのではなく、いろんな情報を取り入れて判断したいものです。
風力発電とバードストライクについての詳細はこちら
日本野鳥の会がまとめた国内のバードストライクの事例はこちら
私はバードストライクを研究していた大学院生の調査の手伝いを数回したことがありますが、さいわいなことにというか私は死体は見たことがありません。
その人は翼だけの不完全なオジロワシとオオセグロカモメの死体を見つけました。
しかしビデオを設置しても当たる瞬間は撮れたことがないそうです。
ただ現地で止まっている風車のブレイドの回転域内を通過するトビは見たことがあります。
そこは海の近くで魚の餌がよく打ち上げられたりしているのでオジロワシも多くて危険度の高い場所でした。
その大学院生もやはりカリフォルニアに行って研究してきていました。
原発事故が起こって私が危惧しているのは風力発電は自然エネルギーだから無条件でよいという考えが広まりやしないかということです。
記事に書いたこと以外に、補助金目当ての設置とか、使用後の解体といった問題もあるようです。
野鳥の会の事例ではなぜか北海道の事例が多いですね。研究者が多いということもあるのでしょうか。
ゆっくり回っているように見えるブレードも、外側の速度は時速280kmだそうですから、翼を切られるのでしょう。
センサーとか縦方向に回る風車でバードストライクを回避できても、別の問題をどうするか、難しい課題です。
まず一番大きな問題として、エネルギー収支(発電設備の製造などに要したエネルギーに対して、どれだけたくさんのエネルギーを得られるか)が良くないことからみると、早計にどんどん建てることは借金を増やすだけになるかもしれませんね。
原発の代替として、ブームに乗るような形での増設には注意しないと・・・
特に今の一般的な風車型は改良の余地がいっぱいありそうです。
一般的にはバードストライクなんてそんなに関心がないでしょうし、鳥が少し犠牲になるくらいのことは仕方がないと思われているようですね。
でも生態系が狂ってくると言うことは、長い目で見れば恐ろしいことだと思います。
日本は資源のない国だといわれていますが、たとえば地熱。
火山国ですから、熱源はいっぱいあるはず。この膨大なエネルギーを活かさない手はないと思いますけどねえ。
それはベルトが風を受けると振動する(昔アメリカで橋がハリケーンの風で共振して崩壊した、そのエネルギーを応用したもの)ことに目をつけた発電機です。この発電機の発案者はアメリカで会社を作っているようです。
この風力発電はあまり大型のものは(素人考えでは)難しいと考えますが、小規模で分散型の発電なら可能かもしれないと思っています。
この時のレポートにはバードストライクのことも取り上げていました。(この部分は親のリクエストでしたけれど...)
脱原発の声が大きくなって自然エネルギーを利用するという考えは間違っていないと思いますが、今ある風力発電の抱えている問題をちゃんと見据えて進んでいく必要があると思っています。
他の方法、例えば地熱発電などに目を向けることが日本には向いていると思います。
私はにわか勉強ですが、いろいろ調べておられるようですね。
地熱発電もそうですし、日本は囲まれているので、潮流発電とか波力発電も有力ではないでしょうか。詳しいことは何も知りませんが。
記事に書いたカリフォルニアの風力発電は5000基以上のタービンが回っているようですが、想像するだけで鳥には脅威だろうなと思えます。
バードストライクと言えば、飛行機のエンジンとの衝突もあります。いろいろネットで調べましたら、鳥の渡りのデータやセンサーで、飛行機との衝突を回避する技術も開発されていて、アメリカでは実際に採用して実績を上げているようです。