樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木と漆の館

2009年10月26日 | 木のミュージアム
先日帰省した際、福知山市にある「木と漆の館」を見学してきました。
私の故郷の京都府北部は「丹後」、このあたり京都府中部は兵庫県中部とともに「丹波」と呼ばれ、小豆の丹波大納言をはじめ栗や松茸など京都の食文化を支える農産物や林産物の一大供給地です。丹波漆の歴史も古く、奈良時代初期の古書に記録されているそうです。


(地元の木工品も陳列販売されています)

江戸時代には福知山藩が殖産政策として育成し、明治初期には約500人の漆掻き職人がいたとか。現在は他の伝統産業と同様、安価な中国製品のために衰退。もはや産業としては廃れていて、依頼があれば数人の伝統継承者が生産するという状態だそうです。


(ウルシの幹に溝をつけて樹液を採取)

漆器はご存知のように英語でJAPANというくらいですし、縄文前期の遺跡から漆塗りの櫛が出土していますから日本独自のものかも知れませんが、樹液を採取するウルシは中国原産です。大昔はヤマウルシやヌルデなど日本に自生するウルシ科の樹木から採取していたのかも知れません。


(幹に溝を刻むカンナは漆掻きで最も重要な道具)

採取できる量はウルシの樹1本当たり1シーズンに200g。牛乳ビン1本分しか取れないわけですから、貴重品ですね。暗いことを「漆黒の闇」と表現しますが、樹液そのものは乳白色で、外気に触れて変色するものの真っ黒ではなく茶褐色だそうです。


(拭き漆や絵付け体験ができる工房)

ウルシに触ればかぶれます。その危険をあえて冒しながら、幹に傷をつけて樹液を採取し、それを精製して木工品に塗れば強度や防水性が高まることを誰が発見したのでしょう。その情熱と知恵を考えると、ノーベル賞を5つくらいあげたくなります。


(漆を塗った木工品を乾燥させるムロ)

漆を塗った木工品はムロと呼ばれる湿気の多い部屋で乾燥するそうです。湿気で乾燥? 意味がよく分かりませんが、漆は酵素によって固まるのでそうするらしいです。
「木と漆の館」を訪れて、漆の不思議さ、ひいては樹木の不思議さに改めて感動しました。やっぱり、木はスゴイ!
木と漆のwebサイトはこちら
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4 コメント

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ウルシに (guitarbird)
2009-10-26 12:18:26
こんにちわ
野山を歩いていてもよく、ツタウルシやヤマウルシで
あの漆が出来るのかという話になりますが、そうですよね、
いわゆる「漆」に使う木は日本に元々あったものではないですよね。
漆塗りを最初に始めた人は、私のようにウルシにはかぶれない人
だったのかな、と思いました。
ここは面白そうですね。
そもそも丹後地方は行ってみたいと思う場所のひとつです。
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小さい頃 (fagus06)
2009-10-27 09:27:24
ウルシにかぶれた記憶があります。
何に触ったのか覚えていませんが、田舎だったので野山でツタウルシか何かに偶然触れたのだと思います。
木工作家の中には、仕事なのにウルシにかぶれる人もあるようです。
ウルシ科の木の近くに寄るだけでかぶれる人もあるらしいです。私は鈍感だと思っているので、以前ヌルデの実を舐めたことがあります。冬だったので大丈夫でした。
丹後も丹波もギタバさんには面白いところだと思います。ぜひ遊びに来てください。
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木と漆の館 (ichi)
2009-10-27 19:45:54
なかなか充実した展示内容のようですね。福知山に行く機会がありましたら、是非寄ってみようと思います。
乾く前の漆はかぶれると言うことがありますが、乾いてしまえば人体に全く害はなく、なにより強い。本当にすばらしい樹液ですね。塗料としてもこれ以上のものはありません。あまり採れないので貴重ではありますが、農産物なのです。
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私が訪れた日は (fagus06)
2009-10-28 07:44:09
九州など各地産の杉の板に漆で天女の絵を描く作家さんの展示会も行われていました。
周辺には温泉や料理店、化石博物館、ベゴニアの植物園などいろんな施設があります。宿泊もできるようです。
妻は温泉が気に入って、「また行きたい」と言っておりました。下のサイトで見られます。
http://farmgarden-yakuno.com/

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