樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

蘭奢待

2013年04月04日 | 木と香り
奈良・東大寺の正倉院に「蘭奢待(らんじゃたい)」と呼ばれる香木が残っています。収められたのは1200年前ですが、今もいい香りが立ち昇るそうです。
ベトナムなどに自生する「沈香(ジンコウ)」という木が、土の中に埋まって何年も経ったものが高級香木の「伽羅(キャラ)」。その最高級品に、東・大・寺の文字が隠された蘭・奢・待という文字を並べて命名したわけです。
沈香(ジンコウ)はジンチョウゲ科の常緑樹。そういえば、同じ仲間のジンチョウゲの花もいい香りがします。


蘭奢待の香りもジンチョウゲに似ているのでしょうか

「蘭奢待」の香りに魅せられた歴史上の人物も多く、織田信長が切り取ったという話はよく知られています。東大寺の記録によると、信長は1寸(3cm)四方を2カ所切り取ったようです。
信長以外にも足利義満、足利義政、徳川家康なども一部を切り取ったそうで、大阪大学の研究者が調べたところ、切り取り跡は38カ所あったとか。
「蘭奢待」は長さ156cm、最大直径43cm、重さ11.6kgというサイズ。高級な香木は1gで1万円の値段がつくそうですから、単純計算すると1億円以上の値打ちがあるわけです。もちろん、文化的な価値はお金には換算できませんが…。
1300年前に建てられた法隆寺の芯柱をカンナで削ると今でもヒノキの香りがするそうですが、いつまでたってもいい香りが残るというのは不思議ですね。
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4 コメント

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伽羅 (scops)
2013-04-04 11:47:24
親戚に香木屋さんがいるので、ありがたいことに小さいころから沈香に接してきました。

そんな訳で、ちょっとだけ補足を・・・
沈香とは沈水香木のことでジンコウ属という分類の木があり、それらの木が自らにアクシデントがあったときに、その防御策としてダメージ部の内部に樹脂を分泌・蓄積し乾燥させたものを沈香と呼ぶそうです。
原木は軽いけど、この樹脂の比重が重いため水に沈むので沈水の香木、すなわち沈香と呼ばます。
沈香はピンキリで、いろんなグレードのものがあり、伽羅というのは沈香の中でも最高級のグレードのものだけに与えられる呼び名で、非常に希少で高価なものです。

普通の沈香は驚くほど高くはないので、沈香入りの線香は今も使っています。
以前、法事のときなどに何回かその親戚の香木屋さんから伽羅の線香をもらったことがありますが、それはそれはいい香りです。でも、伽羅の線香は比較にならないほど高く、自分で買ったことはありません。
今は線香1本でたぶん1000円は超えるでしょう・・・
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Unknown (guitarbird)
2013-04-05 05:21:27
おはようございます
確かに1000年以上前に建てられた建物の材が今でも香るのは不思議と言えば不思議ですね。
削って試してみたいけれどそんな機会は自分にはないのが残念(笑)。
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scopsさんへ (fagus06)
2013-04-05 08:17:56
詳しいご説明、ありがとうございます。
1本1000円以上の線香、もったいなくて供えられませんね(笑)。
自己防衛のために分泌する樹脂を、人間が利用しているわけですが、そのメカニズムが不思議です。樹木に限りませんが、こういう不思議が私が樹木から離れられない理由です。
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2013-04-05 08:21:07
おっしゃるとおり、私も法隆寺の芯柱を削って匂ってみたいです。
この話は、法隆寺の宮大工・西岡棟梁の本に書いてありました。そういう特殊な職人の特権というか、役得ですね。
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