樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

蔵王堂の柱

2011年04月21日 | 木造建築

平日、仕事をサボって調整して吉野に出向いた目的は、ヤマザクラ見物のほかにもう一つありました。金峯山寺(きんぷせんじ)の蔵王堂に使われている木材を見ること。

1年ほど前、蔵王堂の柱にはナシやツツジなど多様な木が、しかも自然木のまま使われているという情報をキャッチし、「これはぜひ見に行かなければ」と思っていました。同じ行くなら桜の季節にしようと、1年間待っていたのです。

蔵王堂の案内板には、「堂内の柱は全部で68本あり、一本として同じ太さのものはなく、すべて自然木を素材のまま使用している。材質も様々で、杉、桧、欅などの他に梨やツツジの柱もあり一定しない」と書いてあります。

 

 

蔵王堂は国宝

 

寺院建築の特に柱はヒノキを使うのが普通で、ナシやツツジを使うのは極めて珍しいです。残念ながら撮影禁止で写真をお見せできませんが、蔵王堂の内部を拝観すると、古びた柱に「神代杉の柱」とか「梨の木」と表示してあります。

しかし、ツツジは柱にするほど太くはなりませんし、お寺に質問すると「ツツジの原種」と答えるそうですが、不可解です。アセビやネジキ、シャシャンボなどツツジ科の中にはけっこう大きくなる樹もありますが、直径1mもの柱に使える巨木があるとは思えません。

帰宅して調べると、ツツジと伝わる柱を奈良女子大学の教授が調査したところ、チャンチンだったそうです。中国原産のセンダン科の樹木で、日本の野山には自生しません。おそらく中国から寄進されたのでしょう。いずれにしても柱の樹種としては異例です。

 

 

 

横手に廻ると、上の写真のように1本だけ白っぽく変色している柱がありました。材質が異なるために、長年の風化の過程で他の柱と違う色になったのでしょう。

また、下の写真のように上の方が少し細くなったり、曲がった柱もありました。自然木をそのまま使ったからでしょうか。

 

 

 

ヒノキをはじめスギ、ケヤキはお寺や神社、お城などに用いられるので強度や耐久性は実証済みですが、ナシやチャンチンには柱に用いるほどの物理的な特性があるのでしょうか。その点でも気になる建造物です。

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2 コメント

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 (guitarbird)
2011-04-21 09:18:37
ここもやはり行って見学したいですね。
こういう発想は私は寺院でも民家でも聞いたことがないので驚きです。
「古くて新しい」発想ですね。
それにしても「ツツジ」を調べるのはさすがですね。
ナシはバラ科で材としては意外とよさそうと思いましたがもちろん私には分からないです。
私が作るならすべて違う木で集めたいと思かな、まず無理でしょうけど(笑)。
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68本 (fagus06)
2011-04-22 08:00:55
すべての柱の樹種が科学的に同定されているのかどうかを知りたいですが、ネットでいろいろ調べましたが、出てくるのは記事に書いた通りでした。
ネット上には「ツツジ本柱」という表示のある写真があったのですが、私が堂内を廻った時にはその表示はなかったので、取り外したのではないかと思います。やっぱり、疑問に思う人がたくさんして質問されるからでしょう。
チャンチンというのも不思議です。わざわざ外来種を使ったのは何故なんでしょう。
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