樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

樹を愛した歌人

2014年09月25日 | 木と作家
白鳥は哀しからずや海の青 空の青にも染まず漂う
中学で習ったこの歌はイメージが鮮烈で、今でも覚えています。詠んだのは若山牧水。大正時代に活躍した歌人です。
この歌にもあるように、牧水は鳥をよく採り上げました。一方、樹木にも愛情を注いだようで、『かなしき樹木』という詩集や『樹木とその葉』というエッセイ集を出版しています。
やはらけき欅(けやき)のわか葉さざなみなし 流れて窓にそよぎたるかも
軒端(のきば)なる欅の並木さやさやに 細葉そよぎて月更けにけり
見上ぐれば窓いつぱいの欅の木 椎の木の蔭の花柘榴花(はなざくろばな)

ケヤキが頻出するのは、特に好きだったからでしょうか。


ケヤキ並木

その他にも樹木を歌った作品があります。
いつとなく黒みて見ゆる楢の葉に 今朝ふく風のあはれなるかも
山に入り雪の中なる朴(ほお)の木に 落葉松(からまつ)に何とものをいふべき

樹の花を詠む歌人は多いですが、ここまで樹種を明示して樹そのもの詠む歌人は少ないでしょう。牧水が相当なツリーウォッチャーだったことがうかがえます。
以前、無残に伐木されたミズナラを見て怒りの歌を詠んだことを当ブログでご紹介しましたが、その後も伐木に怒りを爆発させています。
沼津市に移り住んだ頃、地元の景勝地・千本松原の一部伐採計画が浮上。それを知った牧水は反対運動の先頭に立ち、新聞に意見を投稿したり、苦手な演説も引き受けたりします。結果、伐採計画は中止。その功績を称えて、千本浜公園には若山牧水の歌碑が建立されています。
ただ樹を観察したり、歌に詠んだりするだけでなく、行動する人だったんですね。
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2 コメント

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Unknown (guitarbird)
2014-09-28 23:39:18
こんばんわ
牧水はその時代に樹木伐採反対を唱えていたのは、今から振り返ってみると「先見の明」といえるのかもしれないですが、でもそうではなく、人間としてそうするのが自然なことであったと考える方が自然な気がしました。
何十年何百年経っても森は残っていてほしいと思うし、森がない姿は想像したくないでしょうから。

余談ですが、自分で俳句をやるようになって、俳句と短歌は似て非なるものであり、自分には今のところ短歌は無理そうだな、と思うようになりました。
牧水は (fagus06)
2014-09-29 08:15:00
母親から自然の大切さを教えられたそうで、特に「水」の大切さも歌っています。お母さんの名前「牧」とその「水」をたして「牧水」と名乗ったそうです。
俳句と短歌はやはり別物ですか。私はどちらもたしなみませんので分かりませんが、そうなんでしょうね。

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