以前から「鳥取」という県名がひっかかっていました。野鳥保護の立場に立つ者から見ると、「鳥を取る」とは不埒な県です。
「鳥を取るな!」と訴えている日本野鳥の会には鳥取県支部もありますが、現地の会員はその言語矛盾に悩んでおられるのではないでしょうか。
なぜこのような県名になったのか、ずーっと疑問でしたが、最近ようやくその由来が分かりました。その出所は『古事記』や『日本書紀』。
垂仁天皇の皇子は成人になっても言葉が話せなかったのですが、ある時、白鳥の群れが飛んで行くのを見て、「あれは何と言う鳥か」と初めて言葉を発しました。
喜んだ天皇は、臣下に白鳥を捕獲するよう命令。その臣下は各地を巡ってようやく生け捕り、天皇に献上しました。皇子は白鳥と遊ぶうちに言葉を話すようになったので、天皇はその臣下に鳥取造(ととりのみやつこ)という姓を賜って報いた…という話です。
鳥取県ではなく滋賀県・湖北で撮影したコハクチョウ
白鳥を捕獲した場所が現在の鳥取県という話と、鳥取造の領地が現在の鳥取県という話が残っていますが、いずれにしても「鳥取」の鳥は白鳥だったわけです。
確かに、現在も鳥取県の海沿いには多数の白鳥が飛来します。私も行ったことがありますが、米子にある水鳥公園はコハクチョウの越冬地として知られています。鳥取造は米子でコハクチョウを捕獲したのかも知れません。
そういう由緒正しい名前ですから、鳥取県の県鳥は当然ハクチョウだろうと思いきや、オシドリだそうです。ややこしいことに、お隣の島根県がハクチョウを県の鳥に指定しています。
実は私は鳥取県が「鳥を取る」という意味であることに今この記事を見るまで気づきませんでした。
言葉って、例えばいつも例に出す「スズメバチ」は恐いイメージだけど分解してみると「スズメ」「ハチ」でスズメなんて恐くもない、というように、くっついてしまうと意味のことを考えないことがしばしばあるという例だと思いました。
名前の由来が分かったのですね、さすがです。
そういえば最近、日本の都道府県名を英語に直訳してみたというサイトが話題になっていたようです。
見たことはないそんな話を聞いたことがあるだけですが。
この記事の落ちは予想していた通りだったのですが、でも途中で「あれ、ハクチョウが県鳥なのは鳥取のほうだったっけ?」と思ってしまったのは不覚、一本取られました(笑)。
でも、スズメバチのことは気づきませんでした。確かにそうですね。
島根県の宍道湖あたりにもコハクチョウは飛来するので、県鳥がハクチョウなのは不思議ではないのですが…。
島根県のホームページによると、以前は県鳥はオオハクチョウだったのですが、最近はコハクチョウしか飛来しなくなったので、単に「ハクチョウ」に変更したそうです。
こういう話もおもしろいですね。