樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

5000年前の殺人事件

2013年04月22日 | 木と歴史
先日、「NHKスペシャル」で興味深い番組を放映していました。アルプスで発見された5000年前の人間の冷凍ミイラ(通称「アイスマン」)を解剖して、いろんなことを解明しようという内容。
アイスマンの左肩には矢尻が刺さっていて、生贄として殺されたという説と何者かに殺されたという説があったそうです。殺人説の一つの根拠が、消化器官に残っていた樹木の花粉。
直腸にはモミ(針葉樹)の花粉、大腸にはアサダ(広葉樹)の花粉、小腸にはトウヒ(針葉樹)の花粉が残っていたそうです。花粉は食事の際に体内に入ったと考えられています。


体内に残っていた花粉の一つはこのヨーロッパトウヒ(=ドイツトウヒ)

このことから、食べ物を消化する約50時間の間に、標高の高い針葉樹林帯から一旦、標高の低い落葉広葉樹林帯へ降り、その後再び針葉樹林帯まで登ったと推測できます。
そして、短い時間にそれだけの標高を登ったり降りたりしたのは、何者かに追われていたからではないか、というわけです。
結局、逃げ切れずに背後から追っ手に矢を射られて死んだ、というのが解剖や調査を担当したヨーロッパの学者たちの結論です。
殺されたアイスマンには申し訳ないですが、面白いですね~。現代の科学は5000年前の殺人事件さえ解明してしまうわけです。ポアロや金田一耕助には絶対無理でしょう。
なお、当ブログではこれまでにも、アイスマンがイチイの弓を所持していたことや、シラカバの樹皮の器を携帯していたことをご紹介しました。
コメント (5)
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