スリラー映画は嫌いですがサスペンス映画は大好きで、ヒッチコックの作品は名画座や自主上映に通って全35本中イギリス時代のも含めて33本見ました。一般的には「怖い映画」と思われているようで、代表作とされているのは『サイコ』とか『鳥』。
この『鳥』はカラスやカモメが人間を襲ったり、頑固で愚かな鳥類学者が登場したり、言わば「反愛鳥家」的な映画なので、鳥仲間の間では「ヒッチコックのファンです」とカミングアウトしにくい雰囲気です(笑)。
『鳥』を彷彿とさせるミヤマガラスの群れ(近くの干拓田で撮影)
あの映画には原作があって、イギリスで実際に起きた事件が題材になっているそうです。ヒッチコックのインタビュー集『映画術』を読むと、面白いことが書いてあります。
「これがワシとかタカといった猛禽類だったら、映画化はしなかっただろう」。つまり、身近なカラスやカモメ、スズメがある日突然人間を襲うから恐怖感が深くなるということでしょう。
映画の撮影中にもロケ地のサンフランシスコでカラスの群れが子羊を襲う事件があったそうで、ヒッチコックはその牧場へ行って話を聞いています。映画の中に、カモメに襲われた農夫が眼球をえぐられて死んでいるという、ヒッチコックにしては珍しく凄惨なシーンがありますが、その子羊の話からヒントを得たそうです。
宇治川のユリカモメ。今のところ人は襲っていません(笑)
最近、鳥インフルエンザで野鳥が白眼視されていますが、映画のような物理的な襲撃も化学的な襲撃も、人間に対する自然の復讐という面があるのではないでしょうか。
なお、『鳥』は東宝の「午前10時の映画祭・何度見てもすごい50本」の1本として全国で上映されます。京都ではTOHOシネマズ二条で3月26日から見られます。
私はつい先日テレビで見たばかりですが、多分また行くと思います。