近くにある京都大学宇治キャンパスで「木の文化と科学」という、私にとっては「猫にマタタビ」みたいなシンポジウムがシリーズで開催されています。これまでにも何度か参加してこのブログでも紹介しました。先日その第10回が開催されたので行ってきました。
3つの講演の中で特に興味深かったのは、遺跡から出土する木製品から当時の文化を推測するというもの。例えば、割れた丸太と一緒に木製のクサビと木槌が出土するので、弥生時代はクサビを使って丸太を割っていたことが分かります。下はその復元写真。
当時はノコギリがありませんから、こうやって板をつくったわけです。しかもクサビは、今のカッターナイフみたいに、刃先がダメになったら折って次のを使えるように、4個連続したものが作られていたそうです。
OLFAは2000年前にすでに発明されていたわけです。弥生人の知恵、恐るべし!
クサビの復元模型。これが4個連結したものが出土
下は出土品を元に復元された石斧。立木を伐採する時にはこれを使うわけです。形も大きさも野球のバットのようですが、スイートスポットあたりに穴が開けられ石の刃が組み込まれています。柄はクサビと同じくカシ(アカガシ)。
手に持つとズッシリ重い
クサビも木槌も石斧の柄も、さらに割れた丸太もほとんどがカシ。弥生時代はカシの木製品が多く、古墳時代→古代と進化するにつれてスギが多くなるという話でした。
カシからスギに変わった理由の一つは鉄器の登場。石器では加工しにくい針葉樹も、鉄器なら加工しやすいのでスギやヒノキが使われるようになったらしいです。針葉樹は柔らかいので石器ではボンボン跳ね返って伐採しにくい一方、鉄器なら針葉樹も加工しやすいそうです。
このほか出土木材の保存方法や、遺跡出土木材研究の権威である東北大学の教授の講演もありました。どちらも面白かったですが、少し専門的で、私にとっては「猫にマタタビ」と言うよりも、「猫に小判」だったかな?