樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木文字

2010年04月26日 | 樹木
40年ほど前、ロシアがまだソ連だった頃、共産党体制の節目の年にあちこちで植樹が行われました。普通の植樹ではなく、木で文字を書きながら…。
その後、体制の崩壊とともに忘れ去られていましたが、木が大きく育って衛星写真に写るようになり、各地から「グーグル・アースで文字が読み取れる」という報告が相次いでいるそうです。
その一つが下の画像。モスクワの北東280kmに位置するイワノボという町にある木文字で、「CCCP 50」と書いてあります。ソビエト連邦成立50周年の1972年に植えられたそうです。


(グーグル・アースがとらえた木文字「CCCP50」)

300m×50mくらいの敷地に500本以上の木が植えられ、当時は人間の背丈くらいだった苗木が20mくらいに育ち、衛星画像ではっきり確認できるほどになったというわけです。
体制が崩壊した頃、レーニン像などが壊されたようですが、この木文字はそのまま。地上の人間には何が書いてあるか分からないからでしょう。改革後も当時と同じように森林監督官が手入れを続けたそうです。
下の画像はロシアとカザフスタンの国境付近にある木文字で「レーニン生誕100年」。このほか「ソ連共産党に栄光あれ!」という木文字もあるそうです。


(「レーニン生誕100年」の木文字)

各地の共産党幹部が率先して実施したようで、「宇宙飛行士に見えるように」という冗談のような目的で植樹が行われたのだとか。結果的には衛星から見えるわけですから、目論見としては間違っていなかったわけです。
植えられたのはエゾマツ。ロシアといえばシラカバやポプラですが、落葉樹では冬期に宇宙から文字が見えないので常緑樹にしたのでしょう。
下の写真はそのエゾマツの近縁種アカエゾマツ。関西には自生しないので、近くの森林総合研究所関西支所樹木園で撮ってきました。





イデオロギーや政治の仕組みなど人間がつくり上げたものは消え去っても、自然はそんなことと関係なくいつもどおりの営みを続けている…。この木文字は人事を超越した自然の大きさを感じさせます。
その一方、地球上の様子が誰でも簡単に見られるIT技術を生み出した人間の知恵にも感心します。
コメント (4)
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