樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木の風化・劣化

2010年04月05日 | 木造建築
木に関するシンポジウムやセミナーには積極的に参加していますが、最近だんだんマニアックになってきました。近くの京都大学宇治キャンパスで、今村祐嗣という教授の定年退官記念講演があると知り、面白そうなので行ってきました。
会場にはダークスーツの男性や着物姿の女性が集まり、何やらフォーマルな雰囲気。カジュアルな服装の私は場違いでしたが、一般参加OKなので気おくれしながら聴講しました。


(「木を観て、木に探る」このタイトルに釣られました)

この教授の主な研究分野は木材の腐朽や劣化。日本木材学会の会長も務めた権威のようです。難しい学術的な話かなと思いきや、分かりやすく、興味深い話題がいくつもありました。
その一つが木材の風化。お寺などの木造建築が時とともに古色蒼然としてきますが、その仕組みは知りませんでした。


(近くのお寺にある古い経堂)

今村教授によると、木材のある成分が紫外線を吸収して光分解される → その成分は水にも溶けやすいので雨水に流される → その繰り返しで木が少しずつ削られる、という経過をたどるそうです。「風化」という言葉から、何となく風の作用かな?と思っていましたが、光と雨なんですね。
風化の速度は、針葉樹で100年に5~6mm程度。広葉樹についてはコメントがありませんでしたが、広葉樹の方が硬いので、風化の速度はもう少し遅いでしょう。


(上の経堂の板戸。3mmくらいだからまだ100年未満かな?)

同じ日本でも、地域によって劣化のスピードが違うという話もありました。例えば、九州や高知県では木材の劣化が速く、東北地方や北海道では遅いそうです。
気候が温暖で雨が多いほど腐朽菌や加害昆虫の種類が多いためで、南には北には生息しないシロアリも多いとか。単純に言えば、同じ年に建てた木造住宅は北海道よりも九州の方が早く傷むということですね。


(気候別の木材劣化指標)

思えば、宇治キャンパスや本校のセミナーに何度も参加しましたし、私のフィールド・栃の森は京大の研究林でもあります。京都大学にはいろいろお世話になっています。
コメント (4)
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