樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

奇妙な果実

2010年03月08日 | 木と歌
ゴスペルからブルース、ロック、クラシック、演歌までいろんな音楽を聴きますが、いちばん心に染みるのはジャズの「レフト・アローン」という曲。「ジャズ史上最高の歌手」と言われるビリー・ホリデイのピアノ伴奏をしていたマル・ウォルドロンが、彼女が亡くなった後に発表した曲です。
まさに、Left Alone(取り残された)者の気持ちを切々と表現していて、いつ聴いても心の奥まで響いてきます。


(ビリー・ホリデイに奉げたマル・ウォルドロンのアルバム)
(右上に写っているのがビリー・ホリデイ)

そのビリー・ホリデイの代表曲は「Strange Fruit(奇妙な果実)」。非常にシリアスな歌詞ですが、その中に木が登場します。
Southern trees bear strange fruit
(南の木には奇妙な果実が成る)
Blood on the leaves and blood at the root
(葉や根に滴る血)
Black bodies swinging in the southern breeze
(南風に揺れる黒い体)
Strange fruit hanging from the poplar trees
(ポプラの木に吊るされた奇妙な果実)


(ビリー・ホリデイの自伝「奇妙な果実」。翻訳は大橋巨泉)

白人のリンチによって木に吊るされた黒人の死体を「奇妙な果実」と表現し、人種差別を告発しているのです。
上記の歌詞の後にもっと残酷な描写があって、最初に歌った時はさすがに聴衆が引いたそうですが、徐々に支持され、今ではビリー・ホリデイの最大のヒット曲になっています。
この歌には、ポプラ以外にもう1種類の木が出てきます。
Scent of magnolias sweet and fresh
(新鮮で甘いマグノリアの香り)


(マグノリアの花)

マグノリアはタイサンボクのこと。日本でも庭木や公園木によく使われますが、原産は北米。特にアメリカ南部に多く自生し、ミシシッピ州とルイジアナ州の州花で、ミシシッピ州は別名Magnolia State(マグノリアの州)と呼ばれているそうです。
作詞者は人種差別の激しい南部の象徴として、この花を表現したのでしょう。
今日は少しヘビーな話題でしたが、木を通じて学ぶことはたくさんあります。
コメント (2)
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